独立行政法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門 
部門設立記念講演会
研究部門長 中西準子講演資料
 
本日は、私どもの研究部門設立の記念の集まりにご参集頂きありがとうございます。この研究部門はどういう研究を目指しているかについて、話しをさせて頂きます。
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<2枚目>
まず、この研究部門の概要を2枚目のスライドにまとめました。

産総研の中の研究ユニットには、研究部門、研究センター、ラボ、コアなどの区別があり、後に飯田光明がこの説明をしますので、その説明は省略しますが、安全科学研究部門は、三つの研究センターが中心になり、一部他の研究部門からの方も加わって結成されました。三つの研究センターとは、爆発安全研究センター、化学物質リスク管理研究センター、LCA研究センターです。

この研究部門の名付け親は、吉川理事長です。簡単がいいというのが、その理由でした。現在正規研究員は48名ですが、契約職員など含めると130名くらいになり、その半分以上の方が博士号の学位を持っています。

平成20年度の予算規模は、10億円を少し切る程度です。
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まず、基礎になった3つの研究センターの成果を簡単にお話しします。三つのポイントでまとめてあります。
ポイント1は、国の政策への関与です。ポイント2は、多くの方が使うことができる成果物、ポイント3は、学術論文や特許です。
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爆発安全研究コアの主な業績を示しました。今後、単にコアと言うこともあります。コアという形を維持しているのは、新しい安全科学研究部門の中でも核として残し、産総研がこういう分野で責任もって仕事をするという意思表示です。
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次は、LCAセンターです。主な成果物としては、LCAのためのツールと解説書があります。
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化学物質リスク管理研究センターです。
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この3研究センターが中心となって安全科学研究部門ができたのですが、こういう分野の研究部門を社会が必要としているという背景があったと思っています。これを、ここに列挙しました。

特に、4番目の評価の必要性について強調させて頂きます。
一つには、あらゆる政策について、その立案過程の透明性と説明力が必要になっていると思います。評価こそが、その説明力であるわけです。

また、環境問題だけ取りあげても、影響がいろいろの面に及んでおり、様々な要素を見落とさないようにするためには、複数の影響を評価するということが必要になっています。

また、問題が複雑になっておりまして、必ずと言っていいほどトレードオフの問題が立ちはだかってくる、一つのリスクをなくすための対策が別のリスクを生ずるという危険性を上手に運営するためにも、評価が必要になってきています。

また、特に日本の商品が、世界の市場で勝ち抜くためには、どうしてもリスク評価の開示とリスク管理が必要になっています。特に新規技術を出す場合にはこれが、必須です。

しかも、この場合、企業自身が、リスク評価ができないとダメなのです。したがって、産総研として評価にもっと力を入れ、評価の面で国を引っ張り、産業を引っ張る必要があったのです。これこそが、国の研究所としての役割と認識しています。
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今、申しあげたのは外側の事情ですが、それぞれの研究センター自身も、新しい展開が必要な時期にきていました。

まず、CRM(化学物質リスク管理研究センター)にとっては、地球的な視点とLCAをとり入れる必要がありました。

コアは、今まで相当特殊な爆発事象を扱っています。その意味で、日本国内でonly oneです。しかし、研究の存続性や人材供給のことを考えますと、より一般的な燃焼現象にwingを延ばす必要がありました。より、人間的なもの、生活に近い部分の発火現象をとりあげる必要がでてきていたと思っています。

LCAは、これまでツール開発に力を入れてきました。その功績は非常に大きいと思います。しかし、それらはすでに普及してしまい、より新しいものが求められていました。より、具体的な政策提言で独自性を出す必要があり、化学物質リスク研究とのタイアップが必要でした。
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これまでの3研究センターの仕事の領域を図にするとこのようになります。

縦軸は、空間的、時間的スケールです。原点は、現在を、そして今いる場所、spotを示しています。上にいけば、時間的には将来を、また、空間的にはより広い地球を示しております。横軸は、ここで問題にしているようなことが起きた時、個人が受ける影響の大きさ、つまり、リスクの大きさを示しています。原点に近いことは、被害が大きいことを示しています。

この二つの軸を決めると、それぞれの研究センターは、この図に示した位置にあると言えるでしょう。
では、どういうことを評価してきたのかというのが、この下の表です。

コアで行っていることは、基本的にハザード評価です。つまり、ある物質は、どのくらい爆発危険性があるかを、評価することです。多くの場合、反応器の中とか、或いは、保管場所での事故を想定しています。

リスク管理研究センターでは、生産や消費の過程で出される化学物質が、環境を経由して人や生物に到達し、一定の負の影響を引き起こす、そのリスクを評価することが目的です。主な仕事は、環境中での物質の動態を調べ、暴露量を推定し、リスクを評価することです。コアの仕事に比べると、よりゆっくりした、そして広い範囲の影響を見ています。

LCAの特徴はインベントリ評価です。つまり、どのくらい物を使うのか、どのくらい排出するかです。ここでは、どういう影響があるのかということは、やや小さな関心事です。それは、インパクト評価ですが、非常に大雑把に影響を見ていると言えます。
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こういう背景でできた安全科学研究部門の研究課題は、ここに挙げた4項目として整理できます。
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最大のテーマは、複数のリスクを取扱い、それらのトレードオフ問題を扱うということです。

英語名に、この意味をこめました。つまり、安全と持続性の科学です。我々は、地球の将来の安全も含めた概念として、安全を定義し、それを科学する部門として、安全科学研究部門を作ったのです。
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<12枚目>
安全の関係する分野は広いので、一応、どういうことを対象にするのかを、内閣府が出していた表に印をつける形で示しました。赤字は中心的な課題、緑色が中ぐらい、青は、少し関係ありというところです。

環境エネルギーが、中心です。
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この部門の特徴を理解してもらうために、部門を代表する研究プロジェクト(Pj)を4課題作り、3年以内に一定の成果を世に出すという目標を立てました。
その4Pjのタイトルをここに示しました。従来の課題の延長線上にあるものが2つ、融合研究による新しい挑戦課題が2つです。
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<14枚目>
従来の延長線上にある課題についての簡単な説明。
Pj(1)では、産業保安が新しい課題として入ってきています。
Pj(2)のナノ材料のリスク評価研究は、最も関心の持たれている研究課題です。
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Pj(3)の説明に入ります。鉛のサブスタンスフローシミュレータの構築です。

リスク評価に、地球的な視点と100年後はどうなるの?という視点を入れなければならないという考えで、このテーマが生まれました。温暖化問題で、大気循環モデル(地球シミュレータ)が活躍していますが、リスク評価の世界に、大気循環モデルのようなものを組み込みたいと思ったのです。

地球的な循環を追いかけますが、自然界の動態と人為的な動態の両方を記述し、リスク評価もできるようにします。

先般、吉川理事長にこの研究計画の説明に行きました。とても喜んで貰えました。科学が人類に与えた第3の目が、シミュレーションだと。第1は、二次元を見えるようにした顕微鏡、第2が、三次元を見ることを可能にした望遠鏡、そして、第3が、時間的な予測が可能なシミュレーション。持続性研究で、時間軸の入らないシミュレーションを行っても意味がないと、熱っぽく言っていました。
 
何故、鉛を選ぶかについて一言。水銀の地球全体の動きを調べても、多分対策につながるようなものは出てこない、何故なら、相当部分が自然起因だし、また、有害性が強いから、禁止しか方法がないでしょう。もう一方で、鉄とかリンだと、資源としての意味しかないのです。これも面白くないです。鉛なら、どのようにリスクを管理すれば、有用に使えるかが分かるのです。つまり、実用的なのです。

このシミュレーションで何が分かるかを、スライドの下の方にまとめましたので、読んでください。
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<16枚目>
3年間のプランです。
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融合による新しい挑戦課題の二番目は、バイオマスエネルギー開発・利用の評価という課題です。バイオマス利用に際して、LCAが必要なことは言うまでもありません。これも、十分には行われていません。さらに、バイオマス利用のために当然行うべき生態リスク評価がもっと行われていません。

こんなことでいいでしょうか?エネルギーとして使われる場合には、人健康問題、大気汚染問題もあり、また、燃焼危険性の問題もあるのです。このように多角的な評価を行いつつ、総合的な評価にもっていくことができる、これが安全科学研究部門なのです。
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<18枚目>
バイオマス研究の3年間の計画です。
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これらの部門プレゼンス研究の位置づけを、先に示した3研究センターの研究領域図の中に描き入れました。

鉛のサブスタンスフローは、旧CRMの領域から、北東と南西に延びています。バイオマスは、旧LCAの領域から、南西に、コアの領域まで延びているのです。ここに、黄色の四角で示した領域がありますが、これが、今後この部門として延ばしていきたい領域です。
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<20枚目>
融合的なチャレンジの二つのPjは基本的に、交付金で賄われています。我々としては、できるだけ外部資金で、この種の研究をしかけていかねばなりません。この部門ができて、融合的なテーマではじめて外部資金を獲得したテーマが、この冷媒の評価に関するものです。
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<21枚目>
この図は、コーディネータの山辺さんの文章(*産総研TODAY,2008年1月号)から引用しました。元は、UNEPの報告書です。上の方にある黒い線は、化石燃料による二酸化炭素排出量を示しています。下の線は、フロンと代替フロンからの温暖化ガス排出量を示しています。皆さんは、フロン類の寄与の大きさに驚くと思います。私も、このことを知った時は、本当に驚きました。フロン類の問題は、オゾン層破壊だけではなかったのです。
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<22枚目>
代替フロンになり、相当減りました。

フロン類の一つである、CFC12から、HCFCに代わり、さらにHFCに代わり、温暖化ガス排出量も相当減ったわけですが、それでもGWP(温暖化係数)はまだ相当高いです。今の日本では、全温暖化排出ガスの2%位を占めていると言われていますが(この数字はもう一度確かめたいところです)、将来的には10%位になるという推計もあるのです。できるだけ、良い代替物を探すことがどうしても必要です。
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<23枚目>
これは、自動車工業会が出していた資料をお借りしたものです。これは、自動車のエアコン冷媒についての試験結果ですが、GWPだけを下げればいいというのではないことを示しています。

これは、HFCの代表物であるR134aとCO2を冷媒にした場合の、ライフサイクルにおける温暖化影響評価(LCCP:ライフサイクルにおける総温暖化ガス排出量)の結果です。R134aのGWPは1300です。他方CO2のGWPは1です。GWPだけで比較すると、CO2が断然良く見えます。しかし、CO2の場合、燃費が悪くなるので、ライフサイクルでのガソリン使用量を考慮すると、つまりLCCPは、R134aの方がCO2より低いのです。

つまり、こういう比較が必要なのです。
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考慮すべきは、LCCPだけではありません。人の健康リスク、燃焼特性、費用など、総合的に評価しなければなりません。
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<25枚目>
NEDOのPjは、車のエアコンではなく、室内の定置型のエアコンの冷媒についての評価です。このPjに対し、我々が出した提案はここに示す通りです。

LCCP評価、燃焼特性評価、有害性評価、暴露評価(大気と室内)とリスク評価、それから総合評価です。まさに、安全科学研究部門向きの内容です。
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<26枚目>
こういう多様な評価をし、最後はその総合評価をしなければならない時代になっているのです。
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<27枚目>
安全科学研究部門は、ここに示しました10の研究グループに分かれて研究しています。ここに書かれた研究員の人数は、正研究員のみです。
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ご清聴ありがとうございます。今後のご指導よろしくお願いします。