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不公平な「節電お願い」から公平な「価格メカニズム活用」へ
2011/04/04 岸本充生
電力不足が長期化する可能性が指摘されている。最初は、緊急事態として、計画停電を実施したり、節電のお願いをしたりするのはやむを得ない。しかし、長期的なやり方としてはこれらは是非とも避けたい。計画停電は、電力の必要性とは無関係に実施されるため、効率性が完全に無視されているだけでなく、実施場所の決定を巡ってすでに不公平だという不満が噴出している。節電のお願いも、非効率性であるだけでなく、非常に不平等なやり方である。節電は、がんばって節電した人が報われないので、正直者だけが損をする。社会制度としては非常にマズいアプローチだ。また、節電はどこまでやればいいのかバランスが掴めない。つまり、どこまでやるかを個々人が自分で決めなければならず、正直者にとって精神的な負荷が大きい。結果として、正直者はがんばりすぎて疲れ、これ以上がんばることのできない自分に罪悪感を覚えるだろう。他方、残りの人たちは何もしないでも罰せられないし、罪悪感もあまりない。とても不公平だ。
これに対して、不足しているものの価格を上げる、すなわち市場メカニズムを利用することは、経済学を知らない小学生でも思いつく自然な発想だ。電力を自動的に必要性が高い用途に振り向けられるという意味で効率性が高い。しかし効率性の面だけでなく、公平性の面でも非常に優れたアプローチであることには意外と気付かれていない。つまり、浪費した人が損をして、節電した人が報われる制度なのである。別の言い方をすると、正直者にはご褒美を、怠け者にはインセンティブ(動機付け)を与える。国民の大多数は(私を含めて)怠け者である。インセンティブが伴わない行為は正直しんどい。現行の電気料金のまま節電しろと言うのは苦行である。目の前にケーキを置かれて食べるなと言われているようなものだ。むしろ、価格メカニズムを用いて(価格を上げて)節電を行うように誘導してほしいとぼくは思っている。その方が楽なのである。このように、良いことをやった人が報われるという仕組みこそを社会の基本としてほしい。これの対局にある「非効率で、不平等なやり方」が、「節電のお願い」をはじめとする「国民運動」の類なのである。
さらに、怠け者にとっては、東日本大震災からの復興を願う気持ちを寄付という行為につなげることさえ面倒に思っているだろう。電気料金の上昇分が被災地支援に自動的に回るならば、寄付行為さえ面倒な怠け者にも簡単に寄付の喜びをも与えてくれる。節電という無償の行為に喜びを感じる人は、価格メカニズムが導入されたうえで、さらに節電を行えばその気持ちは満たされる。最近ではかなり落ち着いたが、一時期、「買いだめ」が問題になった。そのためマスメディアなどを通じて「買いだめをやめましょう」なんていう広報がなされたが、そんなことで買いだめを防ぐことは不可能だ。「必要な買い出し」と「不要な買いだめ」を区別する方法は1つしかない。「不要な買いだめ」をしたら損をする仕組みを作ることである。つまり、買いだめを防ぐには、小売り業者が値上げして売り、「増えた利益はすべて被災地に送る」と宣言し、実際にそれを実行する以外にない。商品が再び流通し出すと価格は元に戻るので、不要な買いだめをした人は損をする。ガソリンにも、カップめんにも、電池にも適用できる。
さらに言うと、需要量ありきでの議論がまかり通っていることも不思議である。商品の需要量は価格によって決まるというのは経済学の初歩(であるだけでなく誰しも直観で分かることだ)。電力も1つの商品。「電力需要量」の数字がまるで天から与えられたように所与のものとして議論されていることに疑問を持つ人はもっといてもいいはずだ。個人でも企業でも、電気料金が安ければ、無駄遣いするし、高ければ節約する。例えば、野口悠紀雄氏が緊急提言を行っている。当然検討しなければならないことをわざわざ「緊急提言」せざるを得ない状況の方が異常だと思う。価格メカニズムを利用することは、低所得者層をいじめる不平等・不公平な仕組みであるという先入観が世間の大人たちにはあるのだと思う。低所得者対策はもちろん大事だが、すでに別に様々なやり方で対応がなされているのでそちらをもっと充実すればよいことで、価格メカニズムの導入とは切り離して考えるべきことだ。まずは、提案について、政策評価(シミュレーション)を実施して、効率性と公平性に関する帰結を分かりやすく公表することが戦略的に重要だろう。















