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自然エネルギーシステムのライフサイクル評価
[2010/04/12] 野村昇
地球温暖化問題とエネルギーシステム
最近、地球温暖化問題についてのニュースを耳にすることが多くなりました。地球温暖化問題は、二酸化炭素等の大気に含まれる気体により、熱放射のバランスが変化して気候にも影響を及ぼす恐れがあることを指します。大気中の二酸化炭素濃度は、マウナロア観測所等における測定によっても季節により変動することや、計測可能な大きさで次第に増加していることが明らかにされてきました。ハワイ島のマウナロア中腹にある観測所は、大気中の二酸化炭素濃度を継続的に計測している地点として著名です。この観測所では1950年代末から二酸化炭素の濃度についても計測が行われており、自己紹介に添えてある写真は、筆者がこの観測所を訪問する機会を得たときのものです。二酸化炭素の濃度が、地球の気候の様な複雑な現象についての分析は困難が伴いますが、この問題について調査報告をまとめている組織である IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change) が2007年に公表した報告書では、地球温暖化は人為起源の温室効果ガス排出により現実の現象として起こりつつあるとされています。この報告書は、IPCCによる地球温暖化全体についての4回目の報告書で、Fourth Assessment Reportを略してAR4と略称されています。
地球温暖化が進むと、様々な影響が出てくると言われています。大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させて温暖化による影響を避けるために、人為起源の二酸化炭素排出量を削減することが望まれる様になってきました。1997年に京都で開催された、気候変動枠組条約第3回締約国会議では、2008年から2012年までの5年間における先進工業国からの排出量を削減することを決めた議定書が採択されました。削減量は、1990年を基準年とした削減率で示され(一部1995年を基準とすることも認められる場合もあります)、日本については議定書で定められている6種類の温室効果ガス全体で6%削減することになっています。 また、中期計目標と呼ばれる2020年までの削減についても目標が掲げられています。日本については、エネルギーを得るために化石燃料を燃焼させることに起因する二酸化炭素の排出が、温室効果ガス排出の大きな部分を占めています。このため、エネルギー消費の削減や化石燃料以外のエネルギー源の開発が期待されることになります。
自然エネルギーシステムの評価
さて、太陽光発電や風力発電といった自然エネルギーによる発電システムは、発電時のエネルギー投入はほとんど必要とされません。厳密に言えば、制御のため等に若干のエネルギーが使われているはずですが、適切な運用条件の下では発電量に比べて非常に小さいと考えられます。しかし、太陽電池や、発電用の風車を製造するためにエネルギーが投入されることになります。発電設備を製造するときには、シリコンの基板、ガラス、鉄などの原材料を製造し、これを加工することになります。また、これらの設備を工場から設置地点への輸送、設置地点における工事においてもエネルギーが投入されることになります。
発電設備を設置するときに投入される石油等のエネルギーが、発電システムから得られるエネルギーより大きくなると、その発電システムを作らずに、石油等を火力発電に用いる方が、同じ電力を得るために必要な貴重な化石燃料の投入が少なくて済み、二酸化炭素排出量も少なくなります。このため、自然エネルギーシステム導入が有効であることを確認するためには、投入されるエネルギーとシステムから得られるエネルギーを分析することが必要となります。
この様な分析を行うとき、燃料を燃焼させて得られるエネルギーと電力では、物理的なエネルギーの意味だけで有用性が決まるのでなく、同じ量の電力を得るのに、化石燃料を自然エネルギー設備の建設に投入するのと、火力発電に投入するのとで、どちらが効率的か比較をすることになります。電力を熱に変換すると、1kWhの電力は860kcalになりますが、860kcalの熱エネルギーから1kWhの電力を発電することは、熱力学的に不可能です。このため、比較のためには火力発電の効率等も考慮する必要がでてきます。一方、電力・電源の価値は、電力量だけで決まるのではなく、必要な時に必要とされる電力を供給できる能力や変動する負荷への追従性、周波数/電圧等の安定性といった品質も大切な要因ですが、これらについては火力発電システムの方が優れていることが想定されます。このような分析は、エネルギー分析と呼ばれてきましたが、1990年代にライフサイクルアセスメントがISO14000により規格として定められた頃から、ライフサイクルアセスメントを構成する分野とも考えられる様になってきています。
筆者も、いくつかの発電システムについて単位電力(kWh当たり)の供給に必要なエネルギー投入量、二酸化炭素排出量の検討を行いました。多くの仮定をして推定した結果ですが、石炭火力発電では、1kWhの電力について800g-CO2 程度、LNGを輸入する天然ガスでは450g- CO2 程度の二酸化炭素排出量が見込まれるのに対し、太陽光発電では、100~200g-CO2程度、風力力発電では50g-CO2以下と推定されました。ここでの推定では、太陽光発電は架台の上に設置されたものを想定しており、架台の鉄の製造と工事に起因する二酸化炭素排出が大きな比率を占めると推定されています。屋根に直に太陽電池を取り付ける等の方法をとると排出量は大きく減ることが見込まれます。また、風力発電においては風況により発電量が大きく変わることになり、設置環境による差異が大きく影響してきます。二酸化炭素排出量の数値は、この様に条件により変動し得るものですが、自然エネルギーによる発電システムは、化石燃料による火力発電に比べ、適切に設置/運用すると、化石燃料資源の節約、二酸化炭素排出量に貢献できることが見込まれます。ただし、自然エネルギーシステムによる排出量が、何百倍もの差があるのでなく、エネルギー的に有利になるためには設置条件を適切に吟味することが必要であることが、これらの結果から示唆されました。
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