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独立行政法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門
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放射性セシウムの平常時の規制値はいくらであるべきか

2011/10/18 岸本充生

食品安全委員会からの評価書(案)では指標値の回答が出てこなかったため、厚生労働省が平常時の規制値を発表するのもずいぶん先になりそうだ。ある週刊誌の記者からどんな数字が適切かと問われたので考え方を整理してみた。化学物質の水道水質基準値の導出方法を知っていれば簡単に計算できる。まずは目標とする指標値を決め、経路ごと&食品群ごとの配分割合を決めれば、自動的に数値は求まる。食品群ごとの配分割合は暫定規制値の際のものをそのまま使用する。理由は最後に記した。

 (1)単純なやり方:目標値を1mSvとする

最も単純なやり方は、緊急時の放射性セシウムの目標値が5mSvだったので、一般人の年間目標値である1mSvに、すなわち暫定規制値の値を単純に5分の1にすることである。また、食物を通じた内部被曝以外にも、外部被曝があるため、食品からの放射性セシウムから1mSv上限まで摂取してしまうと残余がなくなってしまうため、例えば内部被曝と外部被曝を半分ずつに分ける(さらに他の核種からの寄与は少ないとみなした)と、暫定規制値の値を10分の1にすることにある。コラム「基準値の根拠を追う」で指摘したように、放射性セシウムの暫定規制値の計算式には、「希釈係数」の0.5が入っているのでこれを除くと、さらに2分の1にすることになる。

結論:平常時の規制値は、暫定規制値の10分の1から20分の1とする。

 

  (2)厳密なやり方:目標値を1mSvとし、元の計算からやり直す

コラム「基準値の根拠を追う」で指摘したよう、緊急時の暫定規制値は1回のみの排出イベントを前提に計算されたものであるので、これを、毎日同じ量を摂取し続けるという前提に変える必要がある。目標値は(1)と同様、年間1mSvの計算と、年間0.5mSvの計算の2通り実施した。

結論:平常時の規制値は「飲料水」「牛乳、乳製品」は10Bq/kg、「野菜類」は20Bq/kg、「穀類」は50Bq/kg、肉や魚は30Bq/kg程度になる。

 注)穀類の値が一番高くなっているのは、現在の暫定規制値(500Bq/kg)は計算値(1110Bq/kg)の約半分に(つまり、かなりの安全側に)に設定されているためである。

最後に、細かい点を2つ指摘しておく。

1つは、目標値をいくらにすべきかについては、議論の余地がある。もっと厳しい、あるいは、もっと緩い目標値を用いる場合、平常時の規制値は目標値の大きさに比例するので独自に計算してほしい。

もう1つは食品群ごとへの配分方法である。水道水質基準値の場合は、摂取量に占める割合(例えば農薬成分なら全体の1割)を用いて配分する。放射性セシウムの場合は、「牛乳、乳製品」のみ幼児の値(その他はすべて成人の値)を採用しているため、平均摂取量の比率で配分することが困難である。