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テクノロジーアセスメントの復権
2010/03/24 岸本充生
テクノロジーアセスメントとは
テクノロジーアセスメントが近年再び脚光を浴びている。新規技術が市場に受け入れられる、すなわちイノベーションのためには、低コスト化や大量生産技術などに加えて、あらかじめ安全性や倫理面の懸念が払しょくされていることが必要不可欠である。こうした社会的影響を、技術の持つ潜在的ベネフィットと合わせて、事前に評価するために、テクノロジーアセスメントの必要性が再認識されているのである。ここで「再び」だとか「再認識」だとか書いたのは、かつて1970年代にテクノロジーアセスメントが脚光を浴びた時期があったからである。そして一旦はみなの頭から忘れ去られてしまったのである。テクノロジーアセスメントが必要だと言うと、60歳以上の方々からは、なんでいまさらという反応が返ってくることが多い。
日本におけるテクノロジーアセスメントの導入と失敗
日本にテクノロジーアセスメントが導入されたのは1960年代末である。ちょうど技術の負の側面に皆が気付き始めた時代である。日本におけるテクノロジーアセスメントの取組の中心は通商産業省工業技術院、今の産業技術総合研究所であった。昭和49年の科学技術白書には、テクノロジーアセスメントは「技術の持っている直接効果のみならず、副次的な影響や潜在的な可能性までも含めて技術を総合的に点検、評価し、技術を社会全体にとつて望ましい方向に制御しようとするもの」と定義され、通商産業省によるケーススタディとしては「原子力利用製鉄」「燃料電池」「医療用電子システム」が挙げられている。私の手元にも1977年の「塩化ビニル樹脂に関するテクノロジーアセスメント報告書」という分厚い文書がある。最近までこうした経緯を知らなかったので驚くと同時に、どうしてこのような先進的な取組が消え去ってしまったのか非常に気になった。このあたりの経緯については吉澤(2009)など、いくつかの研究がすでにあり、日本にテクノロジーアセスメントが定着しなかった理由として様々な点が挙げられている。私の印象としては、1)公害問題の鎮静化とともに面倒な手続きを実施する動機付けが低下(社会のニーズも低下)したこと、2)一部のテクノロジーアセスメントが反技術主義的なバイアスがあったこと、3)制度化されず、ケースバイケースで方法論として確立しなかったこと、などが想像される。
テクノロジーアセスメントの復権に向けて
1972年に設立された米国の議会技術評価局(OTA)が1995年に廃止されたことで息の根が絶えたかに思われたテクノロジーアセスメントは、今度は欧州から復活してきた。欧州では1980年代から各国ごとに議会テクノロジーアセスメント機関が設立され、1990年にはそれらのネットワーク機関として欧州議会テクノロジーアセスメント(EPTA)が設立された。さらには、コンセンサス会議や市民陪審などを含む市民参加型のテクノロジーアセスメントという試みも新たに生まれた。遺伝子組み換え技術やナノテクノロジーといった文脈での活用も多い。こうした世界的なTAの復権の潮流に合わせて日本においても再びTAを制度化し、社会に定着させようとするプロジェクト「先進技術の社会影響評価(テクノロジーアセスメント)手法の開発と社会への定着」が始まっている。新規技術のイノベーションを掲げる産業技術総合研究所でも、テクノロジーアセスメント的研究を30年ぶりに復活させるべき時期が来ている。
次回:4月中旬更新予定















