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今こそ私たちの出番(3)
2010/04/20 永翁龍一
『リスクのない社会』を目指して
さて、私たち安全科学研究部門の究極の目標として、『リスクのない社会の実現』があります。この『リスクのない社会』とはどんな社会なのでしょうか。実は、『リスクがない』ことは、すなわち『受容できないリスクのない』状態を指しており、決して『リスクゼロ』を意味しません。世の中には様々な物質や技術がありますが,一般的には大小の差はあるものの必ずリスクがあります。従って、ここで言う『リスクのない』状態を実現するには様々な研究が必要となることが理解できます。その例をいくつか挙げてみましょう。
前回のコラムで、ある物質のリスクはその有害性と暴露量より決定されると書きました。リスクはこの二つの積により定義されるため、暴露を限りなくゼロに近づけることで、全体のリスクが小さくなります。そこで、完全に密閉された状態で、ある種の有害性を持つ物質を有効に活用することが期待されます。そこで、物質を如何にヒトと隔離して利用するかは、リスクを管理する観点から非常に重要な課題となることがわかります。
前回のコラムで、ある物質のリスクはその有害性と暴露量より決定されると書きました。リスクはこの二つの積により定義されるため、暴露を限りなくゼロに近づけることで、全体のリスクが小さくなります。そこで、完全に密閉された状態で、ある種の有害性を持つ物質を有効に活用することが期待されます。そこで、物質を如何にヒトと隔離して利用するかは、リスクを管理する観点から非常に重要な課題となることがわかります。
リスクを管理する
具体的な例を考えてみましょう。皆さんのご家庭で使用されるエアコンには必ず冷媒が使用されています。この冷媒は、ヒートポンプと呼ばれる低温部分から高温部分へと熱を輸送する装置の中で、熱媒体として使われています。この冷媒には、主にハイドロフルオロカーボン(HFC)と呼ばれる物質が使われます。現在冷媒として使われる物質は冷媒としての性能が極めて高く、またヒト健康への影響が極めて小さく、物質としての安定性が極めて高いことが知られています。しかし、温室効果係数(Global Warming Potential、GWPとも呼ばれます)が二酸化炭素の1,000倍以上もあり、大気中に漏洩することにより温室効果を増大させます。この観点から言えば、HFCは残念ながら有害ですので、是非とも密閉して使用すべき、との考え方が出てきます。しかし、結論から言えば、皆さんがお使いのエアコンからの冷媒の漏れは残念ながらゼロではありません。
それでは、皆さんのご家庭のエアコンからどの程度漏れているのでしょうか?これに関しては経済産業省が昨年発表した統計があり、それに依れば年間2%の冷媒が大気中に漏洩していることが推定されています。これは、平均的な用量のルームエアコンに搭載される冷媒量がほぼ1kgであることを考えると、1年で20gの冷媒が漏れたことになります。この冷媒のGWPを仮に1,000としますと、この1年間の漏洩量は二酸化炭素換算で20kgに相当します。同じ経済産業省の資料によれば、日本からの家庭用エアコンからの冷媒の漏れは2007年では170万GWPトンと推定されており、8,500万台のエアコンから1年間に20gの冷媒が漏れ出している計算になります。2005年における日本の総世帯数は、総務省統計に依れば約4,900万世帯とのことですから、この推定は各世帯に平均2台くらいのエアコンの設置を想定すれば、妥当な推定と思われます。
エアコンで使用される冷媒は高圧ガスの状態になりうるため、通常稼働時のわずかな漏洩(スローリーク)はやむを得ないでしょうが、事故や故障による漏洩は避けたいところです。当然ながら、スローリークを極力小さくする技術開発や、エアコンの故障時における修理の際の大量な漏洩を防ぐための方策や指針の提示も重要です。また、法律の定めにより、エアコンの廃棄時には冷媒を必ず適切に回収しなければなりませんが、これがきちんと行われていないケースが多いとも考えられます。よって、機器廃棄時の冷媒の回収を徹底させる方策も考えなくてはなりませんが、この問題はもはや技術の範疇に含まれるものではなく、むしろ環境政策的な問題となります。さらに、GWPの高い冷媒ではなく、低いGWPを持つ冷媒を使用できる可能性はないのか、との観点での研究も重要です。つまり、リスクのない社会の実現にはリスクの適切な管理が欠かせないこと、またリスクを適切に管理しようとする場合、技術の問題ばかりでなく政策的な課題にも取り組む必要があること、さらに物質代替の可能性も検討すべきこと、の三点が理解されます。
それでは、皆さんのご家庭のエアコンからどの程度漏れているのでしょうか?これに関しては経済産業省が昨年発表した統計があり、それに依れば年間2%の冷媒が大気中に漏洩していることが推定されています。これは、平均的な用量のルームエアコンに搭載される冷媒量がほぼ1kgであることを考えると、1年で20gの冷媒が漏れたことになります。この冷媒のGWPを仮に1,000としますと、この1年間の漏洩量は二酸化炭素換算で20kgに相当します。同じ経済産業省の資料によれば、日本からの家庭用エアコンからの冷媒の漏れは2007年では170万GWPトンと推定されており、8,500万台のエアコンから1年間に20gの冷媒が漏れ出している計算になります。2005年における日本の総世帯数は、総務省統計に依れば約4,900万世帯とのことですから、この推定は各世帯に平均2台くらいのエアコンの設置を想定すれば、妥当な推定と思われます。
エアコンで使用される冷媒は高圧ガスの状態になりうるため、通常稼働時のわずかな漏洩(スローリーク)はやむを得ないでしょうが、事故や故障による漏洩は避けたいところです。当然ながら、スローリークを極力小さくする技術開発や、エアコンの故障時における修理の際の大量な漏洩を防ぐための方策や指針の提示も重要です。また、法律の定めにより、エアコンの廃棄時には冷媒を必ず適切に回収しなければなりませんが、これがきちんと行われていないケースが多いとも考えられます。よって、機器廃棄時の冷媒の回収を徹底させる方策も考えなくてはなりませんが、この問題はもはや技術の範疇に含まれるものではなく、むしろ環境政策的な問題となります。さらに、GWPの高い冷媒ではなく、低いGWPを持つ冷媒を使用できる可能性はないのか、との観点での研究も重要です。つまり、リスクのない社会の実現にはリスクの適切な管理が欠かせないこと、またリスクを適切に管理しようとする場合、技術の問題ばかりでなく政策的な課題にも取り組む必要があること、さらに物質代替の可能性も検討すべきこと、の三点が理解されます。
次回更新は5月1日の予定です。















