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持続可能な社会実現に向けた金融業のあり方
2010/04/05 本田智則
はじめに
はじめまして。持続可能性ガバナンスグループの本田と申します。私の研究テーマは「金融と投資」を対象としたものです。金融と言っても複雑な金融工学を研究対象としているわけではありません。金融・投資市場を活用することによって持続可能な社会を実現することができないかと考え、金融・投資市場の中に環境の概念を組み込む手法について研究しています。私の担当する研究紹介では連載形式で、なじみの少ない金融商品の用語説明なども入れながら研究紹介を行っていきたいと思います。
産総研で金融の研究?
私の研究内容をお話しすると多くの方に、「なぜ産総研で金融の研究なのか?」と質問されます。確かに産総研で行われる多くの研究は、製品や技術開発、及びその評価です。持続可能な社会を実現するためには、持続可能な生産と消費が必要とされており、産総研内でも多くの研究・開発が行われてきました。しかし、すばらしい技術を開発するだけで満足してしまって良いのだろうか?それが研究開始の端緒となりました。生産と消費が存在するならば、そこには必ず金融や投資が存在します。逆に、金融・投資市場を無視した生産と消費はあり得ません。よって、産総研が持続可能な社会実現を目標に掲げている以上、金融に関する研究は不可欠なものであると考えています。
良い製品を作れば売れるのか?
金融・投資市場の本来の役割は、必要なところにお金を回すことで市場を効率化することです。金融・投資市場の役割は良い技術に対して投資を受け、生産設備を整え生産を促進する役割があります。しかし、良い技術が生まれればそれが製品化され、普及するというロジックは地球温暖化のような問題を解決するためには必ずしも当てはまりません。問題は「良い技術」が誰にとって良い技術であるかです。
仮に、通常よりも食品が2倍長持ちする冷蔵庫が販売されたとします。この冷蔵庫の価格は、電気代も考慮したトータル価格が従来製品よりも2割高かったとしたらどうでしょう?この製品はおそらく普及するでしょう。一方で、温室効果ガスの排出量が半分になる冷蔵庫が販売されたとします。この冷蔵庫も値段は先ほどの冷蔵庫と同程度とします。この冷蔵庫は普及するでしょうか?いずれの冷蔵庫も技術的には優れているにもかかわらず後者は普及しないでしょう。なぜならば、前者の冷蔵庫のメリットを享受するのは購買者自身であるのに対して、後者は必ずしも購買者がメリットを享受できるわけではないからです。おそらく、一番最初に地球温暖化によって大きな被害を受けるのは、発展途上国に住む人々になるでしょう。そうなれば、地球温暖化回避につながる冷蔵庫を買ったとしても購買者自身は大きなメリットを感じることはできません。結果として、このような冷蔵庫は放って置いても普及することはありません。
環境税
上記のような問題に直面したとき、すぐに環境税や排出権取引の議論が出てきます。環境税や排出権取引は世界中の大半の国で導入されれば効果があるでしょう。しかし、すぐには実現できそうもありません。一部の国が環境税や排出権取引に参加しなければ、企業はその国や地域に行って生産することで環境税を回避できてしまい、結果として日本から製造業を流出させるだけの結果となってしまいます。輸入時に環境税をかけるという方法もありますが、なかなか難しいでしょう。そこで、金融・投資の出番となります。
産総研で金融の研究?
金融には大きく、投資・融資・保険の3種類があります。私が研究の対象としているのは投資です。投資資金を環境効率性の高い製品を開発する企業に誘導することによって、持続可能な社会を実現することを目指しています。環境効率性の高い企業に対して投資資金を誘導し、逆に環境効率性の低い企業に投資資金を回さないような市場の仕組みができたらどうでしょうか?企業は環境に負荷のかかる製品を生産することができなくなってしまいます。逆に環境に良い製品を作るためにはお金が得やすくなります。私はそのような仕組みを実現できないかと研究を進めています。
次回以降で具体的な研究内容に踏み込んで解説を行っていきたいと思います。
次回:5月10日更新予定















