持続可能で、安心・安全な社会実現に向けた評価研究の推進

独立行政法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門

テーマ別研究

 

環境効率指標

 

 「環境効率」は、製品・サービスの価値と環境負荷の両側面を評価する考え方です。つまり、製品・サービスの価値が増加するほど、あるいは環境負荷が減少するほど、環境効率は向上します。

一般的な環境効率指標


付加価値を基礎とした環境効率指標

 現在、環境効率は、国/産業/企業/製品のレベルごとに算出されることが多く、国レベルであればGDPとCO2排出量、企業レベルであれば企業の売上高とCO2排出量や廃棄物発生量などを比として用いられています。
しかし、現在提案されている環境効率指標にはいくつかの問題点があります。例えば、分子の価値と分母の環境負荷の定義が各社各様で基準が存在しません。また大量のエネルギーを投入している素材産業の環境効率と事業所の電力程度しかエネルギーを消費していないサービス産業と比較することはできません。このように環境効率指標は統一的な解釈が難しいため、企業が環境パフォーマンスをアピールするのが困難だったり、利用者である消費者等が困惑したりという事態が生じています。
そこで、当研究センターでは、国/産業/企業/製品レベルにおいて統一的な環境効率指標の開発を目指しています。 

 なお、本研究は、2004年12月より2007年11月までの3年間、独立行政法人科学技術振興機構(JST)の公募型プログラム「循環型社会」の中の研究課題「付加価値を基礎とした環境効率指標の提案とその活用」として、行いました。
  • 本指標の特徴
    国/産業/企業/製品レベルに共通して、分子に営業余剰と雇用者所得の和を付加価値としておき、分母には、CO2、NOx、SOx、SPM、廃棄物、PRTR対象物質の排出量及び資源消費量をLIMEにより統合した環境影響として定義しています。分子は国の豊かさを示すGDPの考え方を採り入れて、分母の環境負荷物質は目的に応じて選択でき、多様な環境負荷項目を対象としています。国/産業/企業/製品の各生産活動に応じた環境パフォーマンスを評価することができます。

    本環境効率指標


    この指標は国/産業/企業/製品レベルでその定義が共通しているので、相互に関連性を持った上で評価することができます。例えば、産業レベルの環境効率を基準にして、企業レベルの環境効率を評価することができます。下図では、a・b・cの3つの産業を営むX社が、各産業の日本平均の環境効率と比較することができ、かつそれらのベクトル和である企業全体の環境効率(企業環境効率)と基準環境効率とを比較することもできることを示しています。

    特徴

    従来の指標の問題点(①金融業と鉄鋼業の比較のように産業の異なる企業同士を比較することができない、②企業が環境効率の改善を十分に進展させた場合に企業の環境パフォーマンスを適切に評価できない)を克服し、新たに国/産業/企業/製品レベル間で関連性を有しているという特徴を持っているので、特に企業の環境パフォーマンスの評価及びその向上策の検討等に活用できます。
    環境効率研究チームでは、環境効率の概要や環境効率の算出の際に参照する資料等を記載したマニュアル、及び企業が営む産業を検索できる機能や付加価値と環境影響を入力することでグラフ化まで一貫しておこなえるツールを作成、配布することによって、企業が環境効率を円滑に算出するための支援体制を整えています。

  • 成果
  • 環境効率マニュアル
    [解説編]と[算出手順編]の2部構成になっており、解説編で環境効率への理解を深めつつ、算出手順編を参考にして自社の環境効率を算出し、それを産業ごとの平均的な環境効率と比較することができます。

    [解説編]の主な内容

    ①開発した環境効率の概要
    ②開発した環境効率のメリット
    ③環境効率の活用方法

    解説編


    [算出手順編]の主な内容

    ①環境効率に必要なデータの算出方法
    ・有価証券報告書を用いた営業利益及び人件費の算出方法
    ・統計調査票を利用した環境負荷の算出方法
    ・統計調査票を利用した産業分類の把握方法
    ②環境効率の評価方法
    ・自社の環境効率と産業ごとの平均的な環境効率との比較方法

    算出手順編


     
  • 環境効率算出支援ツール
    産業連関表に対応した産業の検索や、Excelへの結果データ出力などの機能を備えた、環境効率算出を容易に進めるためのツールです。    ツールの概要算出支援ツールの概要

    ツール画面


    →ダウンロードをご希望の方
     

その他の環境効率指標の開発

環境効率研究チームでは、LCAの応用研究として、持続可能な社会形成のための環境効率指標の開発を目指し、経済価値を基礎とした環境効率指標や機能に着目した製品に関する環境効率指標を開発しています。また、企業活動・自治体施策の社会影響評価を検討することによって、環境効率指標に社会的便益を導入することも目指しています。さらに、消費者のライフスタイルを持続可能な方向に導くため、消費行動を考慮に入れた環境負荷の定量化についても検討しています。

研究内容


  1. 製品の環境効率指標

    分子を製品の重要な機能項目に対して非線形価値関数を利用し正規化した値と機能項目の重要度を乗じて算出します。
    この指標により、旧製品と新製品の比較、また同等な機能を有する市場のすべての製品との比較が可能となり、製品の持続可能性をより詳細に測定することができると考えられます。さまざまな製品への適応性を確認し、手法としての確立を目指しています。

    製品の環境効率

     
  2. 食の環境効率指標

    食の持続可能性を評価する指標のひとつとして、消費者が1日に摂取する食物から得られる価値及び1日に摂取する食物の環境負荷(CO2排出量)を算出し、日本の家庭において提供頻度の高いモデルメニューについて、食の環境効率を求めました。その際、食の価値となりうるものの例として、摂取栄養及び食品群充足度を提案し、その定量法を検討しています。
    この指標は、日本LCA学会食品研究会での議論を踏まえつつ開発に取り組んでいます。

    食の環境効率

     
  3. 社会的便益を考慮した環境効率

    社会影響評価とは、企業や自治体が何らかの活動をおこなった際に生じる社会変化を定量的に捉え、社会変化が最終的にステークホルダーに対してどのような影響を与えるのかを測る手法です。社会影響評価の枠組みを開発し、その枠組みを元に、企業活動・自治体施策の実施による社会影響について影響領域ごとの定量化を目指します。
    社会的便益を環境効率指標に導入することにより、従来の環境・経済側面に加え、環境・社会側面というもうひとつの指標を見いだし、持続可能な社会の形成に不可欠なトリプルボトムラインに基づいた指標の開発を目指します。

    社会的便益を考慮した環境効率

     
  4. 消費行動に起因する環境負荷の算出

    消費者のライフスタイルを持続可能な方向に導くためには、消費者が自らの消費行動を認識した上で、自発的に行動を変化させていく必要があります。そのためには、消費者が自らのCO2排出量を知るためのモデルを開発する必要があります。その初期段階として、行動起因のインベントリデータを構築し、消費者の時間利用と金銭利用に着目し、ケーススタディを実施して適用範囲を検討しています。