持続可能で、安心・安全な社会実現に向けた評価研究の推進

独立行政法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門

環境暴露モデリンググループ

環境暴露モデリンググループでは、化学物質のヒトや生態系へのリスク評価において、最も基礎となる暴露評価技術の開発を行っております。大気環境、室内環境、河川及び海洋における暴露評価モデルの開発を中心課題として、研究を進めております。また、開発したモデルを用いた暴露・リスク評価を他のグループと連携して実施し、その結果を化学物質管理等の政策に生かしていくような仕事をしております。

メンバー紹介

環境暴露モデリンググループは,東野晴行をグループリーダーとして,9名(常勤研究員5名、特別研究員1名、テクニカルスタッフ3名)で構成しています。当グループは,大気環境、室内環境、河川及び海洋における暴露評価モデルの開発を中心課題として、研究を進めております。


■ 地域スケール大気モデル(ADMER) ■

ADMER(正式名称:産総研-曝露・リスク評価大気拡散モデル(national institute of Advanced Industrial Science and Technology - Atmospheric Dispersion Model for Exposure and Risk assessment : AIST-ADMER ) は,化学物質の大気中の濃度と暴露人口を,排出量と気象条件から計算するモデルです。

ADMERは、2002年から無償公開してきましたが、2008年8月から公開している最新バージョン(Ver.2.5)では、Google EarthTMの衛星写真上での濃度マップ表示、並列計算処理による高速化、操作性の向上、気象庁アメダスデータのダウンロード機能の搭載などの改良を行いました。

現在,ADMERは,簡便な操作性や入手の容易さ,さらに, PRTR制度が施行され様々な排出量データが容易に入手できるようになったことから, ユーザーが年々増加しており,国,自治体,教育機関,企業などすでに様々な場所で,大気系化学物質のリスク評価に活用されています。

ADMERは一般に公開されており,誰でも無償でダウンロードして利用可能です。ダウンロードやADMERの詳細については下記のWEBサイトを参照して下さい。
ADMER WEBサイト:http://www.aist-riss.jp/software/admer/
 
ADMER 2.5
ADMER Ver.2.5でのGoogle EarthTMを用いた大気中のベンゼン濃度分布表示の例
日本各地を5km×5kmの基本グリッドに分割し、この解像度で濃度分布が表示される。グリッドを入れ子構造にして、基本グリッドの中を、1km×1km、 500m×500m、 100m×100mのサブグリッドに分割して詳細な濃度分布の表示もできる。


 ■ 次世代型広域大気モデル(次世代ADMER) ■

溶剤・溶媒などで用いられるVOC類は,近年,PRTR対象物質からアルコールなどの非PRTRの有機化学物質への代替が進んでいますが,これらの代替物質の中は,そのものの有害性は低いものの,環境中での二次生成まで考えた場合,アルデヒドやオゾンなど有害性の高い物質の前駆物質となるものも多く,必ずしもリスク削減にはつながっていない可能性があります。このようなリスクトレードオフ問題を解析するためには,排出物質の大気中濃度に加えて,光化学反応等によって二次生成されるアルデヒド類等の分解生成物の大気中濃度を知る必要があります。

このような背景から,揮発性有機化学物質の大気環境中の反応及び沈着過程をモデル化し,三次元オイラー型の気象・拡散モデルに組み込むことにより,揮発性有機化合物の二次生成物質(主にオゾンとアルデヒド類)の大気環境中濃度が推定可能となる大気モデルの開発を進めております。

次世代ADMER

次世代型広域大気モデル(次世代ADMER)の概念図


■ 室内空気暴露モデル ■

化学物質の暴露によるヒト健康リスクは,大気を含む一般環境経由の暴露の寄与よりも,室内暴露による寄与の方が大きいケースもあり,暴露総量を勘案した適切なリスク評価を行うためには,室内暴露の影響は無視できません。そこで,室内での暴露及びリスク評価手法の確立のために,製品からの放散量と,その室内での挙動を明らかにし,吸入経路を中心とした暴露量の推定を可能にする数理モデルの開発を進めております。

室内空気暴露モデル
室内空気暴露モデルの概念図


■ 河川における化学物質の暴露濃度推定モデル ■

河川における水生生物の生態リスクを評価するには,河川水中の化学物質の濃度を知る必要がありますが,観測の地点や回数は限られているため,観測データだけでリスク評価を行うことは困難です。このような背景から,水系における時空間的に詳細な化学物質の暴露濃度を推定できる化学物質のリスク評価・管理のための産総研-水系暴露解析モデル(AIST-Standardized Hydrology-based AssessmeNt tool for chemical Exposure Load,通称AIST-SHANEL)の開発を進めております。

本モデルを使えば,水生生物に影響が出る濃度を超える確率を水系全体で見ることもできます。例えば,生態リスクの削減が必要な場合,業種や用途別の排出量削減や下水処理場での除去率向上に関わるモデル入力部分を変えて計算すれば,リスク削減対策が化学物質濃度の低減にどのような効果があるのかを定量的に評価することもできます。

AIST-SHANELは一般に公開されており,誰でも無償でダウンロードやCD-ROMで利用することができます。AIST-SHANELの詳細については下記のWEBサイトを参照して下さい。
AIST-SHANEL WEBサイト:http://www.aist-riss.jp/projects/AIST-SHANEL/

SHANEL
利根川・荒川流域のノニルフェノールエトキシレート濃度が5.0mg/m3以上になる超過確率
 

■ 沿岸生態リスク評価モデル ■

海域における有害化学物質の環境濃度および生態系へのリスク評価を行うために、三次 元流動モデル、生態系モデルと化学物質運命予測モデルとを結合したモデルです。モデルは沿岸域における年間を通した物理場や生物場の計算結果から季節毎の平均場としてデータベース化し、海水中の化学物質濃度の再現や予測に使用します。

この沿岸生態リスク評価モデルは誰にでも容易に扱えるように、GUI化し Windows上で運用できるように開発しました。
尚、下記の東京湾リスク評価モデル(AIST-RAMTB Ver. 1.2),伊勢湾リスク評価モデル(AIST-RAMIB Ver. 1.1),瀬戸内海リスク評価モデル(AIST-RAMSIS Ver. 1.0)は、CDにて無償配付しております。詳しくは下記のWEBサイトを参照して下さい。
沿岸生態リスク評価モデル WEBサイト:http://www.aist-riss.jp/projects/RAM/
RAM-TB負荷量
図4 TBT予測負荷量        図5 TBT沈降堆積量(計算値)の水平分布

東京湾リスク評価モデル(AIST-RAMTB Ver. 1.2) TBTの計算例