岸本 充生 (グループ長)
自己紹介

東日本大震災は、「安全」とは何かもう一度深くそして広い視点から考えさせるきっかけとなりました。安全とは「受け入れられないリスクがないこと」と解釈します。つまり2つの要素からなります。1つはリスクの大きさを推計すること、もう1つはどのレベルを「受け入れられない」とするか決めること、です。後者には社会の合意が不可欠です。そういう意味で、何をもって安全とみなすは、自然科学だけで決めることができません。私は、社会や個人が、安全や健康に関するリスクを合理的に減らすために役に立つ評価手法、管理手法、社会の仕組みについて、専門分野だとかはほとんど気にせず、必要に応じて何でも取り込みつつ、嗅覚を頼りに研究をしてきました。振り返ってみると、修士論文では 、交通事故とがん検診とアスベスト対策で「1人救うためにかけられた費用(CPLS)」を比較。博士論文では、環境健康安全(EHS)リスクに関して、米国の省庁が規制策定に費用便益分析を活用しているかどうか調査したり、自動車交通に起因する排気による健康影響が事故による被害よりも大きいことを定量的に示したり、公害裁判の判例文を費用便益分析の枠組みで再解釈する試みを示したり。その後の仕事は、化学物質のリスク評価の仕事、統計的生命価値(VSL)の推計、規制影響評価(RIA)の制度化、工業ナノ材料のリスク評価、新規技術のリスクガバナンスの研究。現在関わっている仕事は、ナノ材料の安全性を確認する手続きを産業技術にすること、新規技術のイノベーションの中に安全性評価を組み込むこと、化学物質か ら自然災害まで、多様な分野を共通のリスク評価手法で横串に刺すこと。最近気になることは、火山の破局噴火、新たなパンデミック、小惑星衝突。東日本大震災による津波被害は私たちが歴史の中を生きているんだという当たり前の事実を思い起こさせました。そういう広い視点を持っておきたいと強く思います。
五十嵐 卓也 (主任研究員)
自己紹介
1981年に通商産業省に入省し、 1993年以降は、以下の部署で、例えば、化学兵器禁止条約、生物多様性条約、POPs条約、PIC条約、OECD環境健康安全プログラムなど、化学物質管理政策やバイオテクノロジー産業政策における国際条約・国際機関対応の業務に従事しました。
・通商産業省 基礎産業局 生物化学産業課
・同省 産業政策局 産業技術課
・同省 基礎産業局 化学物質管理課
・化学兵器禁止機関(OPCW)技術事務局 検証局 情報官 (オランダ・ハーグ勤務)
・(独)製品評価技術基盤機構(NITE) 化学物質管理センター 計画課長
・経済産業省 製造産業局 化学物質管理課 化学兵器・麻薬原料等規制対策室
2008年5月からは、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の主任研究員として、化学物質リスク評価管理のための研究開発プロジェクトのマネジメントを担当しました。このとき、OECD工業ナノ材料作業部会のスポンサーシッププログラムなどの活動に参画し、また、ISO/TC229ナノテクノロジー標準化国内審議委員会の議論全般をモニターしました。
2010年5月からは、当研究部門の主任研究員として、工業ナノ材料のリスク評価・管理手法の研究開発プロジェクトにおいてISOやOECDとのリエゾンや国際情報収集・発信の役割を担っています。
2011年7月、当研究部門の組織改編に伴い、持続可能性ガバナンスグループに所属することになりました。
牧野 良次 (研究員)
自己紹介
2002年度にポスドクとして入所してから7年間は「化学物質のリスク評価」をやっていました.実は私,もっている学位は経済学博士です.「そんな輩がなぜ産総研に?」と思われた方がいますね?まずはその話をしましょう.大学院では経済学のコースで環境問題に取り組んではいました.しかし研究を進めるうちに,環境問題を理解するには自然科学の知識が必須である!だから経済学だけ勉強していてもダメだ!という(今思えば当然の)ことに思い至った.そこで自然科学系研究者との連携についてアンテナを張っていた所,産総研旧化学物質リスク管理研究センターによるポスドク募集の機会に恵まれ,一念発起,産総研に飛び込んだというわけです.最初は分からないことだらけでした.ところが1,4-ジオキサン,キシレンといった化学物質のリスク評価を担当し,自然科学系の研究者と交流する中で,自分の世界が広がってきたような感覚を持ち始めたんですね.まだ芽生えたばかりですが,それが「分野横断的な,融合的な」研究の最初の入り口だったと思っています.これからはリスク評価の対象を化学物質だけでなく「人」や「組織」にも広げて,化学プラントでの事故といった産業災害や労働災害を減らすための研究を進めたいと思っています.もちろん自然科学と経済学の知見,両方を使ってです.「分野横断的な,融合的な」研究の奥で,いったいどのようなものが見えてくるのでしょうか?
本田 智則 (研究員)
自己紹介
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持続可能な社会実現に向けた金融の役割について研究をしています。特に、金融商品の環境パフォーマンスを定量的に評価し、市場原理に基づきながら環境負荷を削減できるような金融商品の開発を目指し、その基礎的な研究を行っています。環境と金融というと不思議に思われる方も多いかもしれませんが、国連環境計画などでは重要な課題として取り上げられています。環境問題への対応というと新材料・新製品等の開発が重要ですが、これらの開発には「資本」が必要です。すなわち、投資や融資、そして株主の同意といった金融の果たす役割は非常に大きなものと考えています。 しかし、環境と金融という分野では定量的な評価がほとんど行われてきていませんでした。そこで、私たちの部門で行っているライフサイクルの視点に立って、環境と金融の融合を目指した研究を進めています。将来的には、既存の金融市場を根底から変えるような仕組み作りを目指しています。
李 紅 (博士研究員)
自己紹介
2011年度に産総研イノベーションスクール(産総研特別研究員)として雇用されました。自然科学的なモデルと社会科学的なモデルを組み合わせて、政策の効果をシミュレートするという学際的な研究を行っています。博士課程での研究は面原系汚染源の制御が難しいとされている中国の「三湖三河川」の一つである雲南省デン池流域を研究対象としました。既存のデータに基づいて流域の社会経済活動を述べる社会経済モデルを構築し、環境政策の実施に依存して変化する環境負荷の発生構造や、水質汚濁物質の輸送構造などをモデル化しました。総合評価の対象となる環境政策は、現在デン池流域で実施されている下水道建設などの様々な水環境改善政策の他に、日本などの先進国で採用されている溶出抑制肥料の使用推進政策、高度排水処理をハイブリッドしたバイオマスリサイクルプラントの設置促進政策などです。水質汚濁物質を削減する政策を考慮しながら、温室効果ガスの排出を制御する政策、手段を考慮して総合的な環境政策の評価を行いました。コンピュータシミュレーションのより、バイオマスリサイクルプラントの導入を中心とする総合的流域環境政策が対費用効果的で、環境改善と流域の経済発展を両立させることが示しました。今後、イノベーションスクールにおいて、イノベーションに役に立つ評価研究はどのようなものか考え、OJTの現場で知識と能力を身に付けることにより、正社員を目指しています。これまで実施してきた評価研究を、イノベーション促進に寄与できるものに高めていきたいと考えています。将来日本で得た知識をアジアの環境政策に活かし、さらには地球規模での環境問題にも貢献したいです。















