巻頭言
部門長 中西 準子
安全科学のホームグラウンド
安全科学研究部門は、2008 年4月1日に設立されました。その目標については、設立記念講演会で述べ、その概略が本号で紹介されていますので、ここでは、少し別の面からこの部門の特徴や、今後の課題を述べてみます。 産総研の研究組織は、全く性質の異なる3 種の研究ユニット、研究部門(Research Institute:RI と略す)、研究センター、研究ラボの混合体です。研究センターは一定の明確なミッションを持っている時限のユニットで、ラボはセンターの萌芽体のようなさらに短期で小さなユニットですが、RI は専門領域をカバーする、やや恒久的なユニット、つまり、ある専門領域のホームグラウンドです。多くの場合、RI の一部の研究員が、センターやラボを作り、飛び出していき、使命が終わればまたRI に戻り、吸収されるという動きをします。 ところが、今回は、独自の活動を続けていた3つの研究センターが集まって、全く新しい研究領域のRI を作ることになりました。つまり、これまでなかった安全科学という新しい研究領域のホームグラウンドを作ることになったのです。それぞれが独自に活動して、独自の分野を作っていたので、いろいろ難しいことがあります。 その難しさと悪戦苦闘している過程で、私は気がついたのです。このRI を作るための努力は、単に、ひとつの新しい研究組織を創り、うまく運営するためではなく、新しい研究領域を作るためのものであり、それがために、難しいのだということに。そして、同時にこの困難を乗り越えることに、歴史的な意味を感じました。 「安全」と「持続性」の両立を目指す科学を創るという目標は、3 研究センターの統合の過程で出てきたものですが、それが、まさに、地球環境問題を抱える今の時代の安全科学のあるべき姿だということに気がつきました。 「安全」は誰もが求めるものであり、生きていくために保証されるべきものではありますが、無限の安全はありませんし、往々にして利己的なものです。その利己性を乗り越える鍵が持続性です。多くの研究機関や大学に、安全・安心のための研究組織があります。しかし、安全と持続性の両立を掲げた研究組織は見たことがありません。私達だけが、この目標を掲げています。これこそが、今後必要とされる安全科学であり、そのホームグラウンドを今、私達は創ろうとしているのです。















