鉛に関するサブスタンス・フロー・シミュレーターの開発
【研究背景】
国際連合環境計画(UNEP)では、大気経由での有害金属類汚染(水銀、カドミウム及び鉛)の拡散等に対する国際的対応を行う必要性について検討が開始されており、有害金属による環境リスクは、近年、国際的な環境問題として取り上げられています。わが国でも、環境省が2006年度に有害金属対策策定基礎調査専門検討会を設置し、国際的観点からの有害金属対策戦略を策定するための基礎的な検討が開始されています。
鉛は、蓄電池やはんだ等、幅広い用途を持つ物質であり、産業や我々の生活に欠かせない金属です。一方で、古くから知られているように、有害性のある金属であるため、近年では、欧州のRoHS指令のように製品中の鉛の使用を規制する動きが見られます。
以上のように、有害金属類、特に鉛に関しては、有害性と資源性を持つ物質として、使用に伴って生じる環境へのリスクがどの程度であるのかということは、国際的にも非常に関心が高いテーマであると言えます。
産総研では、化学物質リスク管理研究センター(現 安全科学研究部門)において、鉛のリスク評価に取り組んできており、2006年に詳細リスク評価書シリーズ「鉛」を出版しました。これは、シリーズ中、最も注目度の高い物質の一つです。
産総研が行った詳細リスク評価では、
- PRTR調査による排出量データや独自の調査結果に基づき、日本国内における鉛のマテリアルフロー解析を実施。この結果に基づき、環境中への鉛の排出量を推定。
- 暴露評価及びリスク評価に関しては、環境中鉛のモニタリングデータ及び血中鉛濃度の実測値に基づいて、精度の高い推定結果を得ることができた。
しかしながら一方で、
- 排出量推定やマテリアルフロー解析は、日本国内のみを対象としたもののみであり、鉛含有製品の国際的な移動などは考慮していない。
- 暴露やリスクの評価は、モニタリングデータに基づく評価であったため、人や生態系への暴露に対する各発生源からの寄与については、定量的に明らかにできていない。
というような点が、今後の課題としてあげられています。
【研究内容】
以上で示したような残された課題を解決するためには、まず、国内外を含む広域で鉛の移動量と排出量を推定すること、排出量から環境中濃度及び暴露量を推定するモデルを開発することが必要となります。
このような背景から、産総研では、日本における鉛使用によるリスクの現状と代替や削減による効果の推定を実現する、鉛のサブスタンス・フロー・シミュレーターの開発プロジェクトを2008年から開始しました。
また、応用一般均衡モデルを用いることにより、環境政策や規制(鉛の製品への使用禁止、輸出入の規制、関税措置)の実施による鉛含有製品の動きをシミュレートし、排出量や暴露濃度が最終的にどこでどのように変化するのかを推定することを目指しています。
















