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詳細リスク評価書シリーズ6 ビスフェノールA 概要

ビスフェノールA(以下、BPA)は、ポリカーボネート樹脂(以下、PC樹脂)、エポキシ樹脂(以下、X樹脂)などの原料として使用されている。1996年以降、BPAは内分泌かく乱化学物質問題の中で取り上げられ、社会的に大きな関心を集めてきた。本評価書では、BPAについて、ヒト健康リスク評価、生態リスク評価、リスク削減対策の社会経済分析を実施した。
ヒトの一日摂取量は、(1)大気、水、食事、消費者製品(哺乳瓶、食器、おもちゃ)からの暴露量の和として推算する方法と、(2)体内動態を考慮して尿中濃度から逆算する方法の二通りの方法で評価した。どちらの方法でも、モンテカルロ・シミュレーションを用いて一日摂取量の個人差を考慮した。
BPAの毒性プロファイルについて検討した結果、ヒト健康に対しては、肝細胞の多核巨細胞化、体重増加抑制、生殖発生毒性の3つのエンドポイントが重要であると判断した。それらのエンドポイントについて、それぞれ暴露マージン(MOE)を用いてリスクを評価した。その結果、最も一日摂取量が多いと推算された1~6歳児に対しても、いずれのエンドポイントについてもMOEは十分に大きく、ヒト健康リスクは懸念レベルにないと判断された。

生態リスク評価では、3つの評価エンドポイント((1)ハザード比法での判断基準、(2)イワナ、オイカワ、ウグイ、ニゴイ、ネコギギの地域個体群の存続可能性、(3)高濃度汚染地域での魚類の生息状況)を設定した。水中のBPA濃度が得られた1,100以上の地点においては、評価エンドポイント(1)の評価の時点でリスクは懸念レベルにないと判断された。評価エンドポイント(1)の評価では判断が保留された地点に対して評価エンドポイント(2)、(3)の評価を行った。これらを総合的に判断した結果、BPAによる生態リスクは、水生生物(特に魚類)の地域個体群の存続を脅かすレベルにはないと結論付けた。

社会経済分析では、PC樹脂製給食食器の代替と飲料缶内面のEX樹脂塗装の代替を取り上げて、その対策にかかった費用とBPA暴露量の削減効果とを評価した。PC樹脂製給食食器の代替については、毎年、対策対象一人あたり127円、日本全体で年間3億7千万円の費用をかけて暴露量を0.2~0.3µg/kg/day削減していると推算された。また、缶内面のEX樹脂塗装の代替については、BPA対策だけを目的とした設備投資はなされておらず、既存設備の稼働率を上げることで対応可能であった。この代替によって、暴露量は平均で0.1~0.2µg/kg/day、95パーセンタイルで0.2~0.6µg/kg/dayの削減効果があったと推算された。

ビスフェノールA詳細リスク評価書は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)委託のプロジェクト「化学物質のリスク評価及びリスク評価手法の開発」のテーマ「リスク評価、リスク評価手法の開発及び管理対策の削減効果分析」の研究成果である。

評価書の全文は,「詳細リスク評価書シリーズ 6 ビスフェノールA」(丸善株式会社)として 2005年11月に刊行されている。 (ここをクリック