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詳細リスク評価書シリーズ13 カドミウム 概要

カドミウム(Cd)は、富山県神通川流域におけるイタイイタイ病の原因物質として知られている。近年では再びカドミウムに対する社会的関心が高まっている。きっかけのひとつが、日本人の主食である米に含まれるカドミウムが注目されるようになったことである。米に含まれるCdの濃度について、国際的な食品規格を決定する委員会であるコーデックス(CODEX)で、米中Cd濃度の基準値が議論され、2006年7月に「精米中濃度として0.4 mg/kg」という値が決定された(厚生労働省・農林水産省2006)。

では、どの程度のCdの暴露があれば、どの程度の悪影響がもたらされるのであろうか。実は、上記の議論の過程でも「Cd濃度が0.4 mg/kgを超える米を食べるということがどの程度の悪影響となって表れるのか」ということが必ずしも定量的に触れられてきたわけではない。なぜならば、一般の人々が日常生活において摂取しているような低いレベルにおける、Cdの摂取とその影響とに関しては、ほとんど明らかになっていないからである。この点をふまえて、本評価書では、日本の平均的状況における、Cdのヒトへのリスクの程度を定量的に明らかにすることを目標とした。また、Cdの暴露が非常に多い場合としてどのような集団が想定されるのか、そしてその集団のリスクはどの程度なのか、ということにも言及している。さらに、将来的にリスクが増大する傾向にあるのか、減少する傾向にあるのかについても、多くのデータに基づいて結論を与えている。このような目的でCdのリスクを解析した研究は日本でも数少なく、非常に貴重なものであると筆者らは考えている。

なお、本評価書では日本人の平均的なリスクについて論じるものとしたため、評価する対象は低濃度長期暴露の場合である。イタイイタイ病のような高濃度暴露の事例については暴露経路、影響発現のメカニズムのいずれもが本評価書で示した場合には当てはまらないことが多いため、本評価書では取り上げていない。

一方、Cdは、水生生物に対する毒性も比較的高いことが知られている。日本では環境基準値として0.01 mg/L(10μg/L)が定められているが、水生生物を対象にしたCdの基準値はない。また、10μg/Lより低濃度の水域についてはCdの影響が議論されることはほとんどなされてないのが現状である。本評価書では対象に水生生物のみならず陸生生物なども含めたが、これらの生物への日本におけるCdの生態リスクの現状を明らかにするのも、本評価書の目的のひとつである。

Cdのリスク評価は長期間にわたる仕事になった。膨大な実測データを整理するところから始め、解を与えるべき問題の明確化に多くの時間を割いた。また、新規手法の適用など、チャレンジングな内容も含まれている。一人でも多くの方に本評価書を手にとっていただき、ご意見、ご議論をいただければ幸いである。

カドミウム 詳細リスク評価書は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)委託のプロジェクト「化学物質のリスク評価及び リスク評価手法の開発」のテーマ「リスク評価、リスク評価手法の開発及び管理対策の削減効果分析」の研究成果である。

評価書の全文は、「詳細リスク評価書シリーズ 13 カドミウム」(丸善株式会社)として2008年1月に刊行されている。 (ここをクリック