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SHANEL

メンバー 東野 晴行

SHANELとは

 偽ブランド商品でもスペルミス*でもなく、河川水中の化学物質の濃度分布を推定するモデルの名前である。正式名称は、産総研-水系暴露解析モデル (AIST-SHANEL: National Institute of Advanced Industrial Science and Technology – StandardizedHydrology-based Assessment Tool for Chemical Exposure Load)と言い、その頭文字(Nの部分は強引だと思うが)をとってSHANELと呼ぶ。環境暴露モデリンググループの石川百合子が中心となって開発を進めている。開発当初は東海明宏先生(現在は大阪大学教授)がスーパーバイザーとして開発の一端を担っていたが、僭越ながらその役割を東野が受け継いだ。2004年に多摩川など4水系に対応したVer.0.8を初めて公開し、翌年に公開したVer.1.0では13水系での解析が可能である。

*Googleで”SHANEL”と入れると、ちゃんと”SHANEL”と入れているにもかかわらず、トップには”CHANEL”のウェブサイトが表示される。二番目に表示されるサイトが我々のモデルのサイトである。(2010年10月1日現在)

 

対象地域が一気に広がります

 SHANELはまもなく日本全国の一級水系で使えるようになる。13水系から109水系へと大幅な拡張である。河川のモデルは、地形や下水処理場の位置、下水道普及率などの入力が必須となるので、どうしても地域依存的なデータを用意する必要がある。これらの地域依存データの中には、入手が困難なものや、入力するのに膨大な労力がかかってしまうようなものが多い。したがって、ユーザーにすべての入力データを用意してもらうような設計にするわけにはいかず、主要なデータについてはモデルに内蔵して配布する必要がある。つまり、対象地域を広げるには新たに対象となる地域のデータを作成して内蔵する必要がある。このような理由から、対象地域の拡張は我々にとってハードルの高い事項であったが、対象地域が少ないことがSHANELの普及を阻害する最も大きな要因の一つであったことから、今回のバージョンアップで思い切って実施することにした。

日本全体のリスクの分布を知ることができます

 今回のバージョンアップでは、河川への負荷量(排出量)を推定する機能の改良も行った。全国の市区町村の下水道普及人口を調査し、各市区町村内の公共下水道の普及区域を人口密度のグリッドデータ等を用いて推定するなど、とても地道な作業を行った。このようにして作ったデータをもとに、どこの処理場でどの程度の量の汚水が処理されて最終的どの河川に流されるのかを調査・推定した。このような仕組みを作ることによって、今回カバーした一級水系の流域内であれば、そこに建っている工場や家の排水管から流したものが、最終的にどの河川の負荷量となり濃度に寄与するのかを推定することができるようになった。
 対象範囲が全国に広がったことで、日本全体のリスクを知ることができるようになった。例えば、洗剤の成分をAという物質からBという物質に変えた場合、日本全国の主要な河川での濃度分布やリスクはどのように変化するのか、というようなことを知ることが可能になった。

産総研オープンラボで最新版をゲット!

 ここで紹介したAIST-SHANELの最新版(Ver. 2.0)は、2010年10月14日(木)と15日(金)の両日に開催される産総研オープンラボに出展します。しかも、見せるだけでなく最新版のCD-ROMをその場でもれなく無償で配布する予定です。この機会を是非お見逃しなく!
 産総研オープンラボへの参加登録は、現在、http://www.aist-openlab.jp/ にて受付け中です。事前に登録が必要ですが、特段の参加資格などがあるわけではなく、誰でも登録をすれば参加できます。
 当日は、SHANEL以外にも、以前このコラムでも紹介したADMER-PROや、内湾の水生生物に対するリスクを評価できるAIST-RAMの最新版、さらに開発中の室内暴露評価ツールについても見ることができます。ぜひご参加ください。

【謝辞】AIST-SHANEL Ver. 2.0の開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクト「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」の一環として実施しました。