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ヒートアイランド現象とは

メンバー 井原 智彦

はじめまして

はじめまして。社会とLCA研究グループの井原と申します。学生の頃を振り返ると、学部から一貫して資源工学系の学科に在籍していました。ただ、所属研究室はエネルギーシステム工学を専門としつつも、環境問題対応策の研究ならば何でもやってよい、という環境だったので、自分自身は、建築物の省エネルギー技術の評価、そしてそこから派生して都市ヒートアイランド対策の評価を手がけていました。

産総研に来て今年で7年目になりますが、ヒートアイランド研究をおこなう傍ら、地域内の廃棄物処理システムの評価、自動車への高反射率塗装の適用評価、消費者行動に伴うCO2排出解析といったテーマも手がけてきました。現在の関心事項は、自己紹介ページをご覧いただくとして、ここでは、自分の主要な研究課題であるヒートアイランド研究についてご紹介したいと思います。

ヒートアイランドとは

そもそもヒートアイランド現象とは、都市部を含む地域で等温線を描くと、都市部の気温が高いために、等温線が島状のように見えることから名付けられた現象です。「熱の島」つまり「ヒートアイランド」というわけです。1850年代にロンドンでHowardという気象学者が発見したのが最初と言われています。彼は“The Climate of London”という本の中でヒートアイランドについて触れています。

東京もヒートアイランド

では、東京はどうなっているのでしょうか? 環境省がまとめた最近20年間の様子を見てみましょう。

気温30 °C超延べ時間の広がり

気温30 °C超延べ時間の広がり

図は、気温ではなく、7~9月で気温が30℃を超えた時間数を表示していますが、暑さの指標であることには変わりません。東京は、ロンドンと異なり、東京湾に面しているため、また鹿島灘や関東山地の存在により、都心を中心とした、きれいな等温線は描かれません。しかし、練馬(そして熊谷)が一番暑く、そこから郊外に向かって気温が下がっていく様子が見てとれます。そして、この20年の間に、練馬を中心としてますます暑くなっていることがわかります。

東京に限らず、日本の都市は沿岸部に位置するため、ロンドンのようにきれいな等温線が描かれることはまれです。しかし、きれいな等温線が描かれなくとも、都市特有の要因により気温が上昇していれば、ヒートアイランドと呼ぶようになってきているようです。

地球温暖化とヒートアイランドは違う

気温の上昇と言えば、昨今、地球温暖化の話を良く聞きます。では、地球温暖化とヒートアイランドは同じでしょうか?

いえ、違います。よく誤解されがちなのですが、地球温暖化は地球全体で起こっている現象、ヒートアイランドは都市でのみ起こっている現象です。
気象庁の観測データを利用して、ここ100年の気温推移をまとめたのが下図です。ただし気温は毎年の変動が大きいため、11年移動平均の折れ線グラフにしてあります(太陽の活動周期は約11年)。すると、東京は100年間で約3℃上昇しているのに対し、日本平均では約1℃しか上昇していないことがわかります。これに、IPCCの第4次評価報告書(AR4)の全球平均の気温変化のグラフを重ねると、地球温暖化の温度上昇幅は東京のそれに比べて小さいことがわかります。

東京の約3℃の気温上昇のうち、1℃程度は地球温暖化かもしれません。しかし、残りの2℃は都市活動に伴うヒートアイランドであると考えられます。ちなみに、図の日本平均気温は中小都市の気温データから作成していますが、これも中小都市のヒートアイランド現象の影響を受けています。近藤純正氏(東北大学名誉教授)は、各地の測候所の気温データを分析し、都市化の影響を取り除くと日本の気温上昇は100年間で0.67℃程度であることを指摘しています。いずれにせよ、東京の気温上昇の大半は、地球温暖化ではなく、ヒートアイランドによってもたらされていると言えます。

何が問題?

では、ヒートアイランド現象はどんな問題を引き起こしているのでしょうか? これについては次回触れたいと思います。次回更新:5月11日(隔週火曜日更新予定)