メンバー | 井原 智彦 |
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今夏の節電
お久しぶりです。社会とLCA研究グループの井原と申します。
今夏は、福島第一原発の被災により東京電力管内で15%の節電が要請されているのを始めとして、さまざまな地域で節電の必要性が訴えられています。それを受けて、既にさまざまな節電対策が自治体や企業によって実施されています。
しかし、これらの対策は必ずしも定量評価に基づき、有効性が証明されたうえで実施されているわけではありません。そこで、私たちは、現在実施されている、または実施することが望ましいとされている対策について、節電効果を定量的に評価しました。今回のコラムは概要を解説します。
夏季の電気需要ピーク時間帯
夏の電力需要の最大電力需要(ピーク電力需要)は14時ですが、13時や15時も14時と大して変わりません。経済産業省が発表した最大電力需要日(ピーク日)の需要構造の推計を見てみましょう。
グラフから分かるように、電力需要のピークは9時から20時までです。そして、エアコンが全体の3割を占めます。
つまり、
- ピークをずらして節電するのならば、大幅にずらさないと意味がない(平日昼間の活動を平日夜間や休日へ)
- エアコンの節電が重要
ことがわかります。
有効な節電対策と有効性の低い節電対策
今回、どんな対策が有効か、数値モデルを用いてシミュレーションをおこないました。結果の詳細は、別ページ「夏季における計画停電の影響と空調(エアコン)節電対策の効果(速報)」にまとめたので、そちらをご参照下さい。ここでは対策の善し悪しを簡単にまとめます。
有効な対策は以下の通りです。
- 窓日射遮蔽(すだれ、ブラインド、緑のカーテン)
結論: 有効
窓からの日射を遮蔽するという対策は節電対策として有効です。ただし、遮蔽物は窓面の外側に置くことが重要です。内側では効果はかなり小さくなってしまいます。緑のカーテン(ゴーヤやヘチマなど)は今からでは間に合わないかもしれませんが、すだれなどを置くことでピーク電力を数%下げることができます。 - 空調設定温度の見直し
結論: 有効
私たちの調査によれば、平均のエアコン設定温度は事務所が26℃、家庭では24.5℃になっています。一律28℃にすることで、ピーク時間帯の電力消費を5%程度削減できます。ただし、熱中症や疲労に注意が必要です。 - 機器・照明の節電
結論: 有効
これは皆さんが既に取り組んでいることですが、日中に照明を消したり、冷蔵庫やテレビ、パソコンを省エネモードにしたりといった対策は、ピーク電力の削減に有効です。 - 空調室外機への水噴霧(室外機への水噴霧式冷却装置の取り付け)
結論: 有効
ただし、水噴霧式冷却装置の入手は困難かもしれません。 - 高反射化
結論: 有効(ただし冬場は電力需要増になる可能性あり)
事務所や住宅の屋根に高反射率塗料を塗布することは夏の節電対策に有効です。ただし、住宅では冬の暖房需要を押し上げる可能性があるので注意が必要です。
ここまでは、シミュレーションの結果、有効であることが示された対策について説明してきました。以下の対策は、必ずしも有効ではありませんが、工夫次第では、有効な対策となります。
- 生活スケジュールの変化(サマータイムの導入)
結論: 有効性が低い(節電効果を期待するには6時間程度の時間シフトが必要)
ピーク電力需要時間帯は9時~20時であるため、この時間帯を外すような大規模な時間シフトでないと節電効果は期待できません。すなわち、節電対策のためにサマータイムを導入する場合、1時間程度のシフトではなく、6時間程度のシフトが必要になります。実際、経済産業省の資料でも、稼働シフトの例として、8:00~12:00の操業を8:00以前に移動させるとか、13:00~17:00の操業を17:00以降に移動させるといった、4時間以上のシフトが紹介されています。1~2時間程度の前倒しの場合、夕方の住宅のエアコンが、後ろ倒しの場合、午前中の業務のエアコンがそれぞれ問題になる可能性があります。前倒しの場合は、退社後一定時間を屋外で過ごして、すぐに帰宅してエアコンを付けることを避けること、後ろ倒しの場合は、業務で予めエアコンを付けておくことができれば、節電につながります。
もちろん、平日昼間の活動を夜間や休日にシフトさせるのは、かなり有効です。 - 通風換気
結論: 有効性が低い
ピーク日の昼間は換気の意味がないほど気温が高くなります。ただし、夕方の帰宅後、エアコンを付ける前に、通風換気をおこなうのは有効です。 - 打ち水
結論: 節電対策としての有効性は低い
日中の打ち水は気温を下げる代わり、湿度を上げるため、蒸し暑くなるばかりか、節電効果もほとんどありません。しかし、夕方に打ち水をすれば、局所的に暑苦しさを和らげることができます。
なお、昼間に打ち水をする場合は、室外機に対しておこなえば、節電となる可能性があります(上記の室外機への水噴霧と同じ原理)。
15%節電するには
家庭
空調設定温度の見直し、日射の遮蔽の2つの対策で15%節電できます。
- 空調設定温度の見直し
扇風機などを活用して、28℃設定に変更。
あるいは屋外で過ごす。 - 日射の遮蔽
すだれや緑のカーテン(ゴーヤ、ヘチマ、アサガオなど)
これらが難しい場合、機器や照明の節電を追加しましょう。
- 機器や照明の節電
- 冷蔵庫を「強」から「中」へ。
- 日中は照明を消す。
- テレビを省エネモードへ。
- 温水洗浄便座をオフ。
- 待機電力をオフ。
業務・事務所
業務では、空調設定温度の見直し、日射の遮蔽、機器・照明の節電で、15%の節電を達成できます。
- 空調設定温度の見直し
- 日射の遮蔽
- 機器や照明の節電
- 照明を半分に間引く。
- 不在時の消灯を徹底。
- 離席時はOA機器をオフかスタンバイモードに。
これらが難しい場合は、さらなる機器や照明の節電、操業スケジュールの変更などが考えられます。
- 機器や照明の節電
OA機器、エレベータなど各種の電気機器の運転見直し。 - 操業スケジュールの変更
複数の事業者で交代で休業する、操業日を平日から休日にシフト。
次回更新:未定