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評価の押し売りから社会との対話へ

メンバー 本下 晶晴

ごあいさつ 

はじめまして。社会とLCA研究グループ研究員の本下と申します。産総研に入所してから今年で8年目になります。大学時代は土木工学を専攻しており、衛生工学の研究室に所属しておりました。とはいえ、博士論文は土壌内における有害化学物質の輸送メカニズムの解明に関する研究であり、土木工学および衛生工学の中では異色な研究を行っておりました。産総研に入所してからは5年間ライフサイクルアセスメント研究センターでライフサイクルアセスメント(LCA)手法の開発、特にライフサイクル影響評価手法の開発に従事してきました。安全科学研究部門の所属となってからも継続してLCA手法の開発に取り組んでいますが、一方でLCAによる製品・技術・システムや消費者行動の評価結果をどのように社会に発信して社会を動かすか、またそのためにはどのような評価手法が求められるのかを考えながら研究を行っています。

評価の押し売りからの脱却

安全性やリスク、環境影響などを定量的に評価することは重要であり、今後も不可欠であることはいうまでもありません。一方で、これまでにはこうした評価結果が一方的に社会に押し付けられていたように感じています。例えば、消費者がCO2の排出を減らすための行動として、アイドリングをストップする、電気製品の主電源をこまめに切るなど様々な行動が提案されていますが、実際に広く受け入れられているとは言い難い状況です。この理由の1つとして、環境負荷を減らすために効果的な選択が消費者にとって必ずしも望ましい選択とは限らないことが挙げられると思います。いくら環境に対して望ましい選択であっても、その効果に比べて生活の中で失われる便益が大きければ受け入れられません。情報を提供すること自体は極めて重要ではありますが、我々はこれまで一側面からの情報を提供するにとどまり、その他の側面において社会が何を求めているかを考えることにあまり熱心に取り組んでいなかったのではないかと私自身は反省しているところです。

安全科学研究部門だからこそできること・求められること

もちろん、一つの側面における情報を提供するための研究も簡単ではなく、これまでも決して手を抜いてきたわけではありません。ただ、我々が行っている評価研究も比較的進展しており、パーフェクトではないにしてもある程度の評価・分析はできるようになってきていると私は感じています。だからこそ一側面から評価するだけでなく、社会のニーズを踏まえた様々な技術、製品、システムや消費者行動の提案に取り組むべき段階にきていると考えています。これは産総研の中でも評価技術のエキスパートがそろう我々のユニットだからこそ取り組むことができる課題であり、また求められているテーマと私は考えています。社会が何を求めているのかに目を向けることで我々の評価技術開発に対してさらに求められることも見えてきて、我々の持つ技術が社会を変革するためにより一層貢献できるようになるものと信じています。こうした目的意識を持って取り組んでいる研究内容の詳細については、次回以降のコラムで紹介したいと思います。

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