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緑遊(りょくゆう)

メンバー 中西 準子

 4月も終わりに近づきましたが、つくばではまだ名残り桜を目にします。急にやってきた寒波のせいで、春は足留めを食ったようです。通常の気候なら足下でツツジが咲き乱れ、周囲は街路樹や山の向こうの木々の緑で生き生きしている筈ですが、今年はまだ枯れた木々の肌が相当むき出しになっています。つくば駅から産総研西事業所へ向かう西大通りには、ゆりの木という恐ろしく背の高い街路樹が植えられていて、まだ新緑がまばらですが、連休後には新緑で包まれるでしょう。この木が緑に包まれると見事です。つくばには様々な緑があって、5月はとても楽しいです。

ひと月くらい前ですが、日曜日の朝にふとTVの衛星放送にチャンネルをあわせたところ、「MIDORI~緑遊人」という番組をやっていました。はじめて、「緑遊」という言葉を知ったのですが、この言葉がすっかり好きになりました。緑は種類も多く、どこにでもあり、しかも冬を除けばいつでもあるので、花のような感激は少ないですが、これほど飽きのこない美しいものはないです。それが、また、新緑という形でやってくる、この喜びをどう表現したらいいのだろうとしばしば考えていたのですが、この言葉を見た途端、これだ、自分が探していた言葉はと思いました。緑を楽しむではなく、緑と遊ぶが粋です。

そのTV番組で、「緑遊人」として長野県小布施町の古い民家に住むアメリカ人女性が紹介されていました。彼女は250年以上続く造り酒屋の役員になって、木桶(きおけ)を使った伝統的な酒造り「木桶仕込み」を半世紀ぶりに復活させたとのことです。大好きな日本文化が失われることに危機感を感じ、木の道具や職人の技を残したいと考えて、たった一人の職人を捜し出し、木桶を作ったとのことでした。

これも緑遊か。それなら、私も緑遊人の端っこに名を連ねさせてもらってもいいのかなと思い、秘密を書くことにしました。

研究所で私がコンピュータをおいて使っている机は樹齢400年以上の筑波山の杉の古木で作ったものです。厚さ6cm強のむくの一枚板です。机になって数年経ちますが、まだ、杉の香りがします。

もっといいものがあるのです。研究所の私の部屋に入ると、右に小さな花瓶置きのような机があり、丸善(株)から出版した詳細リスク評価書シリーズ25冊がおいてあります。

御神木の机

この机は茨城県鹿嶋市にある鹿島神宮の御神木で作ったものです。樹齢500~600年のものです。もう10年近く前に激しい台風がきて、古木がなぎ倒されたことがありました。家人はその翌日神宮にかけつけて、倒れた御神木を買い、数年間乾燥させた後、この机を作ったのです。

机の年輪

この年輪の細かさに驚きます。芯の部分は1cmの中に10本はあるでしょう。この木が生きてきた数百年の風雪を感じさせます。この年輪の細かさこそ、御神木の御神木たる所以なのです。詳細リスク評価書は旧化学物質リスク管理研究センターの皆の知と汗の結晶ですが、この杉には脱帽でしょう。(また、つぎの月末に会いましょう)。