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電力各社の再生可能エネルギー売電契約保留の報道を受けて2 ~自治体別ソーラーパネルの設置容量と認定容量の現状~

メンバー 本田 智則

はじめに

電力会社から相次いで、新規の再生可能エネルギー売電契約の回答保留が発表されました。2014年10月1日時点で、北海道電力東北電力四国電力九州電力から一部容量を除いた再生可能エネルギーの受け入れ回答保留が発表されています。

私達は、日本学術振興会科学研究補助金(課題番号:26241033)『分散型エネルギー取引市場制度設計に関する理論構築、経済実験及び社会実装』の採択を受けて再生可能エネルギーを中心とした分散型電源活用のための制度設計研究を進めていますが、研究方針への大きな影響を与えることから状況を注視してきました。

前回のコラムでは、固定価格買取制度によって既に導入されている再生可能エネルギー発電設備、及び認定済ではあるけれど発電を開始していない再生可能エネルギー発電設備のそれぞれが、最大の出力になった場合の発電電力を電力各社の最小需要量と比較し、現時点では最小需要量を上回る発電が行われることはないものの、認定済の設備が全て発電を開始した場合は一部電力会社の最小需要量を上回る可能性が示されました。

一方で、現時点では電気事業法で定められた発電設備の認定が行われており、最小需要量を上回る発電が行われたとしても、大規模停電等系統を不安定にさせる影響は少ないと考えられました。しかし、現行法では30日を超えた発電抑制が行われた場合、そこで発電者に生じた損失を電力会社が保証する制度となっており、大規模な再生可能エネルギー設備の導入は結果として30日間の発電抑制分を発電者が負担し、それ以上の発電抑制が行われた場合は、電力会社が負担する制度となっており、電力会社の経営を圧迫する要因となり得ることが示唆される結果となりました。

前回のコラムでは、「電力会社別」というマクロな視点に基づいて再生可能エネルギーの導入状況の分析を行いました。

しかし、実際は、太陽光発電設備等で発電された電力は、発電された場所に非常に近くで消費されるのが一般的です。例えば、家庭用太陽光発電設備などで発電された電力であれば柱状変圧器が接続されている4-5軒の家の間で融通され消費されるのが一般的です。電力はその特性から遠方に送電すればするほどその損失が大きくなります。そのため、メガソーラーのように大規模な場合を別として、できる限り近場の需要者に対して供給されることが一般に行われています。

ところが、近隣で発電された電力を消費しきれなければ、より遠方の需要者に対して電力を送電せざるを得なくなり、結果的に発電された再生可能エネルギーを効率的に使用する事ができなくなってしまいます。また、既存の送電網は火力発電所等の大規模な発電所から徐々に電圧を落としつつ枝分かれしながら送電を行うことを前提として設計されており、太陽光発電に代表されるような分散化された再生可能エネルギーを逆流(逆潮流)させることを前提とした設計にはなっていません。

前回のコラムで見たように、電力会社別で見た場合には、現時点の導入量、及び設備認定済で今後導入される予定の発電設備が新たに発電を開始しても、北海道電力、東北電力、四国電力、九州電力の4社を除いて、その最小需要量を上回ることはないことが確認できました。しかし、よりミクロな視点で見た場合には、地域的な需要量と供給量のバランスが崩れている可能性が懸念されます。

そこで、本コラムでは、都道府県、及び市区町村といったよりミクロな視点で再生可能エネルギーの稼働容量、及び認定済容量に基づく将来予定される導入量の需給バランスの現状を確認することにしました。

前回のコラムでは、現在の再生可能エネルギー発電設備の稼働状況、及び認定済容量のいずれについてもその大部分が太陽光発電設備であることを確認しました。そこで、本コラムでは議論を簡潔にするために再生可能エネルギーのうち太陽光発電のみを対象として議論することとします。

また、本コラムは、今般の報道を受け、正しい現状把握に対して定量的な示唆を与えることが目的であり、その導入促進に賛成・反対と言った意見を形成することは目的としていないことにご注意下さい。

都道府県別太陽光・風力発電の稼働・認定状況

最初に、都道府県別に既に稼働している太陽光発電設備の容量(稼働容量)と認定段階にあり今後稼働が予想される設備の容量(認定容量)を確認することにします。

都道府県別の結果は下図の通りとなりました。

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上記左に示した、既に稼働している都道府県別の太陽光発電設備の容量(稼働容量)は、福岡県の64.5万kWが最も多く、続いて愛知県の57.2万kW、茨城県の56.7万kWとなりました。

続いて、右に示した、認定済で今後稼働が予定される太陽光発電設備の容量(認定容量)を含めた場合では、福島県の441万kWが最も多く、続いて、鹿児島県の432万kW、茨城県の406万kWと続きます。認定容量では、九州南部、及び関東北部から東北沿岸部の容量が多いことが分かります。

しかし、需要量の多い地域で、多くの太陽興亜発電が行われたとしても近隣で消費されるため、設置容量の多さは必ずしも需給バランスの崩れには直結しません。

人口千人当たりの設置容量

そこで、本コラムでは、需要と供給のバランスを見るための簡易な一指標として人口千人当たりの太陽光発電設備設置容量を求めることとしました。

人口が多い地域では多くの電力需要が見込まれます。一方、人口の少ない地域では多くの需要が見込めないため、発電された電力を遠方の需要の多い地域まで送電する必要が生じます。先に述べたとおり、遠方への送電ではロスが生じると共に、既存送電網の送電能力の限界から、物理的に送電が行えず発電抑制が起こる可能性も懸念されます。

都道府県別人口は総務省が公表している2013年10月1日時点の人口推計をもちいました。

人口千人当たりの再生可能エネルギー発電容量は下図の通りとなりました。

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この結果から、稼働容量ベースで見た場合には、九州南部、及び北関東で人口当たりの発電容量が大きくなっていることが分かります。

認定容量ベースで見た場合の傾向は、先に見た総容量の傾向と同様、九州南部及び北関東から東北太平洋沿岸で高くなっていることが確認できます。

ここで、人口千人あたり1000kWの太陽光発電設備とは、人口一人あたりに1kWのソーラーパネルが設置されているのと等価であり、1世帯の人数を4人とするならば1世帯あたり4kWのソーラーパネルが設置されているのと同じであると言えます。

人口あたりの太陽光発電設備の設置容量が最も多かった宮崎県では2772kW/千人となっており、1人当たり2.7kWの太陽光発電設備を保有している状態になることが予想されます。よって、1世帯を4人とすれば11kW/世帯の換算となり、一般に普及している屋根設置型の太陽光発電設備の容量(4kW程度)の3倍近い容量のソーラーパネルが全世帯に設置されているのと同じ状態になることを意味します。

ここまで都道府県別に太陽光発電設備の設置容量と人口当たりの設置容量を見てきました。都道府県という範囲は再生可能エネルギーの需給バランスを見るには範囲が広すぎます。

そこで、もう少し解像度を高くして、市区町村レベルで需給のバランスを確認することにします。

各自治体の人口は2010年度の国勢調査の結果に基づく人口をもちいました。そのため、その後市町村合併があった地域では人口当たりの太陽光発電設備設置容量を正しく計算できず空白となっている地域があります。

市区町村別の人口千人あたり稼働済太陽光発電設備の容量

市町村別に人口千人当たりの太陽光発電設備の設置容量を確認していきます。

まずは、現在稼働している太陽光発電設備(稼働容量)の図を下に示します。

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市町村別に見た場合、大まかな傾向は都道府県別と同様ですが、一部地域に偏在して太陽光発電設備が設置されていることがより顕著となります。

現時点で稼働している人口千人当たりの太陽光発電設備の容量が最も多かったのは下図の水色で囲った北海道白糠郡白糠町の3744kW/千人でした。

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北海道白糠郡白糠町の人口は1万人弱ですが、そこに300MW(30万kW)のメガソーラーが設置されているため、人口当たりの太陽光発電設備の容量が最大となりました。

続いて多かったのが下図に示した熊本県葦北郡芦北町で1259kW/千人となりました。

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こちらも、人口約2万人の地域に21MWのメガソーラーが設置されていることによる影響です。

市区町村別の人口千人あたり認定済太陽光発電設備の容量

ここまでは、現時点で稼働している太陽光発電設備の容量を見てきましたが、続いて今後稼働が予定される認定済の太陽光発電設備の容量も含めて議論を進めます。

人口千人当たりの太陽光発電設備の認定容量を見ると下図の通りとなります。

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この結果から、人口千人当たり1000kW、すなわち人口一人あたり1kW以上の太陽光発電設備の設置が予定される地域が多数存在することが分かります。

人口千人当たりの太陽光発電設備の容量が最も大きかったのは、熊本県球磨郡相良村で45221kW/千人、すなわち人口一人当たり45kWの太陽光発電設備となる予定であることが分かります。

続いて多かったのは、福島県西白河郡西郷村で25966kW/千人が予定されており、人口一人当たり約26kWの太陽光発電設備が認定されていることが分かります。

一般家庭の屋根設置型太陽光発電設備の容量は4kW前後であることを踏まえると、人口あたりの太陽光発電設備の容量が非常に大きいことが分かります。

2地域以外も概ね人口が少なく土地の値段の安い地域に大規模なメガソーラーが認定された結果、人口当たりの太陽光発電設備の容量が大きくなっていることが分かります。

以下では、上記の日本地図を地域別に拡大して見ていきます。

北海道

北海道では、太平洋側を中心に多くの太陽光発電設備の設置が予定されていることが分かります。課題として、多くの太陽光発電設備が設置される地域から電力の需要地までの距離が遠く、需要地までの送電インフラの整備の課題があることが推察されます。

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東北地方

東日本大震災の復興政策の一つとして、福島県を中心として再生可能エネルギーの導入がすすめられており、茨城県、福島県の自治体の多くで人口1人当たり1kW以上の太陽光発電設備の設置が予定されていることが分かります。これらの地域から都市部である仙台市周辺及び、関東南部の電力需要が大きな地域まで送電を行う必要があることが示唆されます。

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関東地方

関東地方では、人口が多く電力の大きな需要が見込まれる東京23区、及び埼玉県南部と神奈川県東部では人口当たりの太陽光発電設備の設置容量は人口千人あたり50kW未満となっており、再生可能エネルギーによって電力需要を満たすことができないことが分かります。一方で、これらの地域を囲むように赤で示された人口当たりの太陽光発電設備設置容量が大きな地域が円を作るように広がっており、都心部の電力需要を再生可能エネルギーによって満たすためには周辺地域から都心部への送電設備の整備が不可欠であることが分かります。

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中部・北陸、関西地方

中部から北陸、関西にかけての地域においても関東地方ほど顕著ではありませんが都市部で太陽光発電設備が少なく、その周辺で多くなっている傾向が見られます。

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 中国・四国地方

中国地方では山間部を中心に太陽光発電設備の設置が進んでおり、四国では沿岸部を中心とした嗄声可能エネルギーの設置が進められています。

瀬戸内海を中心とした工業地帯が電力の需要地となると予想されるため、発電された電力を瀬戸内海周辺まで送電するための送電網の整備が必要になると予想されます。

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九州地方

九州地方では、ほぼ全市町村で人口1人当たり1kW以上の太陽光発電設備の設置が予定されており、最大の需要地である福岡県周辺でも多くの太陽光発電設備の認定が行われているため、供給過多になる可能性が高いと推察されます。これを回避するためには広島や瀬戸内海周辺の工業地域まで送電網を整備する必要があります。そのため九州電力単体での対応ではなく、電力会社間の融通を含めて検討が必要ですが、先に示した通り隣接する中国四国地方でも多くの太陽光発電設備が設置されているため長距離の送電を行ったとしても受給のバランスを取ることができないことが懸念されます。そのため、蓄電池や揚水発電等を活用して発電された電力を太陽光発電が行えない時間帯に使用する方策を考えない限り、太陽光発電設備のこれ以上の導入が困難な状況になることが示唆されました。

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沖縄地方

沖縄県はそれぞれが離島になっているため、国内の他の地域とは異なり需要と供給を狭い範囲でバランスさせる必要があります。そのため、より安定した電源または蓄電池の活用を進めなければ再生可能エネルギーの導入が困難となると予想されます。

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まとめ

ここまで2回に分けて、再生可能エネルギーの導入状況及び2014年6月末までに設備認定を受け今後設置が進められる予定の再生可能エネルギーの現状を概観してきました。

その結果、再生可能エネルギーの大量導入では最小需要量を超えて発電が行われた場合、発電抑制が頻発する事態となり、発電者及び電力会社の収益を悪化させる懸念が示唆されました(第1回コラム)。

続いて、地域別の太陽光発電設備の導入状況を見ていくと、必ずしも需要と供給のバランスを踏まえた太陽光発電設備の設置が進められてはおらず、人口が少なく土地の値段が安い地域に多くの太陽光発電設備の設置が偏っていることが確認できました。

戦後に整備されてきた電力システムは、大規模発電所から消費地まで高圧送電によって電力を送電し、需要者に配電を行うことを前提として整備が行われてきました。一方、現在進められている太陽光を中心とした分散型電源の普及はこれまでとは異なり、広く偏在した発電設備から電力需要の大きな地域への送電が必要となります。

そのため、より多くの再生可能エネルギーを導入していくためには、既存の送電インフラの活用だけでは限界があり、新たな送電設備の整備が不可欠になると予想されます。特に関東地方ではその傾向が顕著であり、電力需要の大きな都心部ではその土地の値段の高さから再生可能エネルギー発電設備の設置は進んでおらず、一方でその周辺地域では多くの再生可能エネルギー発電設備が設置されていることが示されました。このことから、再生可能エネルギーの更なる導入を行うためには、分散化された電源から都心部への送電網の整備が不可欠と言えます。

一方で、九州地方に見られる様に全域にわたって太陽光発電設備が広く導入される地域では、需要量よりも多くの太陽光発電設備の設置が進められる可能性があり、電力会社間の電力融通を踏まえても非効率な送電が必要になる可能性が示唆されました。このような地域では需要と供給を地域間でバランスすることは困難であり、更なる再生可能エネルギーの導入には、太陽光発電以外の再生可能エネルギーの導入促進や、蓄電池、揚水発電の活用など、需要と供給をタイムシフトすることによってバランスを取らざるを得ないことが示されました。

不安定な自然エネルギーの活用には、様々な形で再生可能エネルギーの発電を平準化していくことが不可欠です。また、国際的には温室効果ガス排出削減が強く求められており、再生可能エネルギーの活用は不可欠な状態にあります。

しかし、このような取り組みでは送電網の設備や蓄電池、揚水発電活用のために必要となる整備費等を誰が負担するのかと言った議論も必要になります。電力価格の値上げを最小化しつつ、再生可能エネルギーの導入をすすめていくためにも、技術面だけではなく、制度的な見直しを含めて包括的な取り組みを行っていかなければならないと言えます。2016年に予定されている電力の小売り完全自由化、その後の発送電分離を視野に入れ、制度設計も含めた多様な取り組みが求められます。

注意:本コラムは、筆者が所属する産業技術総合研究所及び産業技術総合研究所を所轄する経済産業省の見解ではなく、筆者個人の研究者としての見解を示しています。