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計画停電と空調節電対策(速報)(8): 水の利用(打ち水など)

グループ 社会とLCA研究グループ
メンバー 井原 智彦

(8) 打ち水

小規模な打ち水を朝夕の時間帯に実施すれば、蒸発潜熱を増加させ、また水蒸気も拡散されるため、局所的に温熱環境を和らげます。

しかし、13時に道路面積1 m2あたり1 Lと大規模な散水を実施しても、節電効果はほとんどないことが分かりました。気温を平均0.6℃下げる一方、相対湿度を平均9.6%上げました。湿度の上昇(13:10)が気温の下降(13:20)に先行するため、最大電力需要はわずかに増大しました。

訂正(2011年6月15日): 2011年6月5日の稿では、打ち水による気温下降と湿度上昇は「わずか」としていましたが、計算結果を確認したところ、ともに一定量ありましたので、訂正します。節電効果は結果を確認済みであったため、訂正はありません。

これは、昼間の大規模な打ち水は、大きな蒸発を招く一方、水蒸気が拡散できないためと考えられます。

一方、17時に実施した場合は温熱環境を和らげるほか、17時以降の電力需要をわずかに下げる効果がありました。なお、10時に撒いた場合はわずかに最大電力需要を押し下げました。

電力需要

グラフは、13時、10時、17時それぞれに、すべて道路面に対して、1 m2に1 Lの水を1分間かけて撒いた場合です。10時に撒いた場合はわずかに最大電力需要を押し下げ、13時に撒いた場合はわずかに最大電力需要を押し上げています。17時に撒いた場合は最大電力需要には影響しませんが、17時以降の電力需要をわずかに押し下げます。

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図19 13:00に打ち水を実施した場合の需要カーブ(最大電力需要日)

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図20 10:00に打ち水を実施した場合の需要カーブ(最大電力需要日)

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図21 17:00に打ち水を実施した場合の需要カーブ(最大電力需要日)

温熱環境

打ち水の効果を体感温度で表現すると、下のグラフのようになります。指標には、標準新有効温度SET*を用いました。

17時に実施した場合は体感温度は継続して下がるのに対し、10時や13時に実施した場合は、いったん体感温度が下がった後に、急上昇し、その後、また低下する、という変化をします。

このことから、打ち水は節電効果はほとんどないものの、温熱環境を和らげる手段として17時頃に実施するのが良いと言えます。

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図22 打ち水を実施した場合の体感温度の変化(最大電力需要日)

体感温度は、気温、湿度、周囲からの輻射熱、風速および着ている服によって決まります。ここでは、参考として、気温・湿度(相対湿度)・輻射熱(平均放射温度MRT)の変化を示します。

10時や13時の打ち水では、気温や輻射熱を低下させる一方、打ち水直後に湿度を上昇させてしまいます。このことが、電力需要や温熱環境の一時的な悪化を招きます。

一方、17時にも湿度は上昇しますが、蒸発量が少ないため、その上昇量は少なく、したがって気温と輻射熱の低下が勝ち、電力需要や温熱環境を緩和させます。

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図23 打ち水を実施した場合の気温の変化(最大電力需要日)

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図24 打ち水を実施した場合の湿度の変化(最大電力需要日)

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図25 打ち水を実施した場合の周囲からの輻射熱の変化(最大電力需要日)

なお、打ち水で大きく気温を低下させるには非現実的な散水量となってしまうことは、広域気象の観点からは平野ほか11)などによっても定量的に指摘されています。

温熱環境の地域分布

13時に打ち水をした場合の、14時の、基準ケースとの体感温度の差を下図に示します。道路面積の割合が大きいため散水量が多くなった郊外で、体感温度が1℃以上上昇してしまっているのが分かります。

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図26 13時に打ち水を実施した場合の14時の体感温度の変化の分布(最大電力需要日)

一方、下図は、17時に打ち水をした場合の、18時の、基準ケースとの体感温度の差です。都心で1℃程度体感温度が減少しているのを始めとして、郊外でも体感温度が減少していることが分かります。

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図27 17時に打ち水を実施した場合の18時の体感温度の変化の分布(最大電力需要日)

(9) 空調室外機への水噴霧

パッケージエアコンやビルマルチは、気温が高いほど効率が悪化します。気温が30℃を超えるときに、その種のエアコンを利用している建物(すべての住宅と一部の事務所)に水を噴霧すると、業務で3%、家庭で6~9%の最大電力需要削減効果があり、家庭・業務の合計で5%の効果があることが分かりました。

この空調室外機への水噴霧は、室外機に水噴霧式冷却装置を取り付けることを想定しています。

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図28 空調室外機への水噴霧を実施した場合の需要カーブ(最大電力需要日)

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