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夏季の計画停電の影響と空調節電対策の効果(第2報(速報))

グループ 素材エネルギー研究グループ
メンバー 井原 智彦

2011年7月31日に第2報を公開しました。
(第1報の更新履歴)

はじめに

今夏は、全国的に電力供給力が低下しており、東京電力管内では最大電力需要を15%削減することが要請されています1)。皆さんの節電努力により、また7月下旬は気温がやや低めに推移していることにより、ひとまず停電の可能性は避けられていますが、なお猛暑の際に需要が逼迫する可能性があります。第1報に引き続き、効果的な節電の方向性を示すため、数値モデルにより、各種の空調節電対策2)の効果を評価しました。

評価方法の概要

シミュレーションモデル

我々は、これまで、明星大学や岡山理科大学などとの共同研究を通じて、地球温暖化やヒートアイランド現象に伴う都市高温化のエネルギー消費と人間健康への影響を評価してきました。この中で、都市気象-ビルエネルギー連成シミュレーションモデルAIST-CM-BEMを開発し、改良してきました。

AIST-CM-BEMは、気象や街区構造によって変化する気温・湿度と空調需要を同時に計算します。そのため、エアコン使用 → 空調排熱 → 気温・湿度上昇 → さらにエアコン使用 という悪循環(フィードバック)を考慮することができます。第1報から、計算ルーチンを部分的に改良しました。

AIST-CM-BEM2_0

図1-1 AIST-CM-BEMの構造

猛暑日は、電力需要の3割を空調(エアコン)が占めるとされています。空調需要を削減する対策の効果は、気温や建築物によって大きく変化します。AIST-CM-BEMを用いることによって、各種の空調節電対策の効果について、地域の気温や街区構造による変化も評価できます。

計算条件

AIST-CM-BEMでシミュレーションをおこなうにあたっては、上空の気象条件(数百m以上)、都市の街区構造、および空調・機器・照明の時刻別スケジュールが必要となります。

上空の気象条件は、明星大学の亀卦川幸浩准教授が広域気象モデルWRFを用いて計算した東京の夏季における結果を用いました。

都市の街区構造は、東京都から借用した地理情報システム(GIS)のデータを基に作成しました。第1報と異なり、東京都全域を計算対象としています。第2報の計算対象領域は、東京電力管内のうち東京支店と多摩支店の管轄地域におおむね一致し、最大電力需要では管内全体のおよそ3割を占めます。

targetArea_0図1-2 計算対象地域

電力需要を算出する上で最も重要な各種のスケジュールデータは、第1報同様、経済産業省が発表した夏季の最大電力需要日の時刻別電力需要(需要カーブ)を一部手直ししたものを、AIST-CM-BEMが再現できるように設定しました。業務街区を計算する際、第1報では事務所のスケジュールデータを用いましたが、第2報では業務部門の全業種平均スケジュールを用いています。

demandCurve_meti_0

図1-3 経済産業省が推計した需要カーブ(最大電力需要日)

なお、対策によってはアナウンスメント効果や波及効果が期待されるかもしれませんが、定量化を重視し、ここでは空調・機器・照明の時刻別スケジュールが変化しないとして、最大電力需要に対する効果を評価しています。

検討した対策と最大電力需要(産業を除く)に対する効果の概要

検討した対策と家庭と業務の最大電力需要に対する効果の概要を示します。なお、対象となる対策をすべての建物で実施した場合の計算結果です。

「家庭+業務の最大電力需要」は、対策が導入された場合の最大電力需要が発生する時刻と基準シナリオに対する増減をまとめてあります。

「基準シナリオのピーク時刻(14:00)の電力需要」には、対策が導入された場合、14:00の電力需要がどのように変化するか、まとめてあります。

「対策導入時のピーク時刻の電力需要」には、対策が導入された場合に最大電力需要が発生する時刻の電力需要がどのように変化するか、まとめてあります。たとえば、「(1) 窓日射遮蔽」ならば、19:00の電力需要がどのように変化するか、まとめてあります。

第1報と異なり、多くの対策が、最大電力需要発生時刻(ピーク時刻)をずらしてしまうため、表では、導入前のピーク時刻・導入後のピーク時刻それぞれの時刻における効果をまとめました。電力需要の詳細は、各シナリオのページにある日需要カーブをご覧下さい。

なお、「(0-2,3) 計画停電」シナリオは暫定的な計算結果です。後日差し替えます。

表1-1 検討したシナリオと家庭+業務の最大電力需要に対する効果の概要

単位: %

空調節電対策 家庭+業務の
最大電力需要
基準シナリオの
ピーク時刻
(14:00)
の電力需要
対策導入時の
ピーク時刻
の電力需要
ピーク
時刻
家庭
+
業務
家庭 業務 家庭 業務
戸建
住宅
集合
住宅
戸建
住宅
集合
住宅
(0-2) 計画停電(-20:00) 20:10 -1 -4 -13 -13 +11 +11 +5
(0-3) 計画停電(-18:10) 18:20 +3 -4 -13 -13 +15 +10 +7
(1) 窓日射遮蔽 19:00 -6 -9 -9 -6 -1 -1 0
(2) 通風換気 14:10 -1 0 0 -1 0 0 -1
(3-1) 室温28℃ 14:10 -5 -6 -4 -4 -6 -4 -4
(3-2) 室温+2℃ 14:10 -3 -3 -2 -4 -3 -2 -4
(4) (1)+(2)+(3-1) 19:00 -11 -15 -14 -10 -9 -8 -3
(12) 震災後 14:10 -18 -17 -18 -18 -17 -18 -18
(7) 屋上高反射 14:10 -2 -5 -1 -1 -5 -1 -1
(8-1) 打ち水(13:00) 14:10 0 0 0 0 +1 0 0
(8-4) 打ち水(6:00) 14:00 0 0 0 0 0 0 0
(8-3) 打ち水(17:00) 14:00 0 0 0 0 0 0 0
(9) 室外機水噴霧 14:10 -6 -8 -6 -5 -8 -6 -5
(10-1) 生活前倒し 16:10 +2 -2 -2 -3 +13 +14 -4
(10-3) 生活前倒し+(4) 16:40 -10 -17 -15 -11 -3 0 -13
(10-2) 生活後ろ倒し 14:00 +2 +4 +4 0 +4 +4 0
(11) 輪番シエスタ 16:10 -1 0 0 -22 0 0 0

 

(0-2)計画停電は、今春の5グループを3時間ずつ停電から、今夏は5グループ(各5サブグループ)2時間ずつの停電と発表されています(計算では、サブグループの停電時間帯は10分ずつずらして設定)。評価したところ、計画停電中に屋内に熱負荷が蓄えられるため、停電解除後に空調需要が急増しました。特に、最終グループの最終サブグループの停電が終了する20:10は、まだ電力需要が小さくない時刻のため、空調需要が電力需要を押し上げた結果、計画停電が導入されても、もとの最大電力需要とほぼ変わらなくなってしまうことがわかりました。なお、この計算結果は、全地域を2時間ずつ停電させる25シナリオを組み合わせたものです。実際の計画停電は、都心が除外されたり時間帯が変更されたりする可能性があります。

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図2-0-2 計画停電実施時の需要カーブ(最大電力需要日)

(0-3)また、計画停電を途中で止めてしまうと、産業部門を除いて考えた場合、停電解除後の最大電力需要は、もとの最大電力需要を大きく上回る可能性があることがわかりました。
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図2-0-3 第4グループで計画停電を打ち切った場合の需要カーブ(最大電力需要日)
(1)窓日射遮蔽(北面以外の窓の遮蔽率を70%に設定)は、ブラインド、よしずやすだれ、あるいはゴーヤやアサガオなどツル植物による緑のカーテンを窓の外側に設定することを想定しました。

(2)通風換気(非空調時に室温が気温を超えるときに窓開け)は、日中の業務で空調を減らす効果がありました。今回は、基準シナリオで非空調室は在室率に応じて通風換気をするように設定を変更したため家庭での効果はないように見えますが、夕方の帰宅時、エアコンを付ける前に換気をおこなうと、空調需要を減らせます。

(3-1)我々の調査によると家庭のエアコンの設定温度は平均24.5℃となっています。また、業務では26℃と推測されています。すべての家庭が28℃に引き上げれば6~10%程度の節電効果があると評価されました。なお、計算では、室温がエアコンの設定温度に等しくなるとしています。

(3-2)家庭の平均は24.5℃ですが、既に28℃以上に設定している家庭もありました。28℃以下の家庭が2℃ずつ上昇させた場合は、家庭の平均設定温度は26.5℃になります。

(12)震災以降の電力需要を分析すると、大口需要家だけではなく、皆さんを始めとする、強制されていない小口需要家でも節電努力がされていることが分かりました(ただし、同時に、最近、その努力が薄らいできていることも分かりました)。このシナリオは震災後の節電努力を考慮したもので、実に18%の節電が達成されています。
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図2-12 震災後の節電の取り組みを考慮した需要カーブ(最大電力需要日)
(8-1)道路に打ち水して気温を低下させるには、道路面積1 m2あたり1 Lでも多くありません。条件によっては、湿度を上昇させるため、空調の負荷を増大させてしまう結果となりました。

(10-1)すべての人が生活時間を1時間前倒しすると、暑さの厳しい夕方に、業務で空調需要が減る一方、非勤労者を含む人々が帰宅し始める家庭で10%以上空調需要が増えてしまいます。勤労者に関しては、勤務時間を前倒しする一方、退社後を屋外で過ごし、帰宅時間を従来通りに保てば(できれば後ろ倒しすれば)、節電につながる可能性があります。また、非勤労者も気温の高い時間帯にエアコンを付け始めるのを避け、屋外で過ごせば節電に寄与します。

計算条件や結果の詳細も随時公開していきます。

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