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経済協力開発機構(OECD) Working Group on Chemical Accidentsの紹介

メンバー 和田 有司

WGCAの設立の経緯とこれまでの活動

安全科学研究部門が経済産業省の代理で出席している経済協力開発機構(OECD:Organisation for Economic Co-operation and Development)の化学品事故ワーキンググループ(WGCA:Working Group on Chemical Accidents) の活動を紹介する。

WGCAは,化学品委員会および化学品・農薬・バイオ技術作業部会合同部会(Joint Meeting of the Chemicals Committee and the Working Party on Chemicals, Pesticides and Biotechnology)の一つのワーキンググループとして位置付けられている。

1984年12月のボパール事故や1986年11月のSchweizerhalle(バーゼル)事故で,化学工場の事故による有害化学物質の放出,流出が問題となり,1988年にOECDの化学品事故プログラム(Chemical Accidents Programme)が開始された。

化学品事故プログラムでは,1989年に「事故による汚染の汚染者負担の原則の適用」(the Application of the Polluter Pays Principle to Accidental Pollution),1992年に「化学事故の防止,備えと対応」(Chemical Accident Prevention, Preparedness and Response)のOECD理事会勧告を発行している。

1992年に化学品事故の専門家グループが設立され,年1回の会合を開いてきたが,1998年の第8回の会合から,WGCAとして活動するようになった。

WGCAには,OECD加盟国以外に,OECD非加盟国やいくつかの国際機関が参加している。例えば,前者は中国やロシアであり,後者は国連環境計画(UNEP:United Nations Environment Programme),国連欧州経済委員会(UNECE:UN Economic Commission for Europe)などである。

WGCAでは,4年ごとにプロジェクトを設定して活動を行っており,開始2年前に参加各国,機関から新規提案を募集して,前年にWGCAで提案書を審議して,上部機関に申請するという手続きを取っている。現在のWGCAは2017-2020年の期のプロジェクトを実施中である。

WGCAの活動内容に関しては,一部はインターネットで公開されている。

化学品事故プログラムの最も重要な成果である「化学事故の防止,備えと対応の原則」(GP:Guiding Principles for Chemical Accident Prevention, Preparedness and Response) については,1992年の発行以後,2003年に第2版が発行され,さらに2011年と2015年に補遺が発行されているが,現在はその大幅な見直しプロジェクトが進行している。化学事故の防止,備えと対応について分析を行い,ベストプラクティスを提言し,OECD加盟国ばかりでなく,非加盟国への情報共有を国際協力によって行うことを目的としている。

2008年には,GPの実施状況が安全性向上につながっているかどうかを判断するための「安全パフォーマンス指標開発の指針」(SPI:Guidance on Developing Safety Performance Indicators) を発行し,産業界向け,行政機関向けのそれぞれの指針を示している。

2012年には,過去の事故の分析から,不適切なリーダシップや組織文化の不足が問題であるとし,「プロセス安全のためのコーポレートガバナンスの指針」(CGPS:Guidance on Corporate Governance for Process Safety) を公開した。CGPSの中には,Corporate Governance for Process Safetyの本質的要素の解説と39の質問からなるセルフチェックのためのリストが含まれている。

WGCAの現在の活動

第28回WGCAは,2018年10月23日(火)-25日(木)の3日間,パリのOECD本部で開催された。日本からは,経済産業省化学物質管理課の了解を得て,高圧ガス保安協会の一員として筆者が参加した。以下に2017-2020年の活動を示す。

・Change of Ownershipのガイダンスを発行。

・Benefits of RegulationsのWorkshopレポートを発行。

・Natech II 2018/9のWorkshopのまとめと勧告,良好事例の収集。

Natech : 「自然災害に起因する技術的事故」(Natural-Hazard Triggered Technological Accidents)

・Guiding Principlesの改訂。

・EU-OECD-UNECEの共同の事故報告と分析。MAHB(Major Accidents Hazards Bureau / JRC / EC)より重大事故の分析とMARS(Major Accidents Reporting System) データベースの報告。

この他,トピックスとして,「ラテンアメリカ諸国の化学事故の防止,備えと対応」のセッションが半日行われ,また,参加各国,各機関の代表からの事故情報の共有を含む活動報告が行われた。日本からは筆者が,「高圧ガス事故の動向と日本におけるNatech」について報告した。

WGCAそのものはクローズドな会合で,企業の方にご参加いただくことはできないが,毎年いろいろなテーマでワークショップなど自由に参加できる会議が開かれているので,積極的に参加して,情報提供と情報収集を行っていただければと思う。

謝辞

OECD/WGCAへの参加に際しては,経済産業省化学物質管理課の担当の皆様のご協力をいただきました。また,部分在籍出向(クロスアポイントメント)先の高圧ガス保安協会の一員としてWGCAに参加する機会をいただきました。ここに謝意を表します。