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社会とLCA研究グループ

グループ長 工藤 祐揮

メンバー

新しい技術を社会に導入したとき、環境や社会経済にどれだけの効果や影響があり得るのかを把握することは、技術の普及戦略やそれを促進するための制度を検討する上で重要な役割を果たします。
ある製品やサービスに関係する活動の連鎖を「ゆりかごから墓場まで」考えて環境への影響を評価する手法を、ライフサイクルアセスメント(LCA)と呼びます。社会とLCA研究グループでは、LCA手法やLCA的思考を研究の中心に据え、資源リスク分析やエネルギーシステム分析などと組み合わせることによって、環境だけでなく社会経済への影響や波及効果を分析するための評価手法の開発と、それらを用いた技術評価や持続可能な社会を実現するための社会制度設計に関する研究を進めています。

(1) ウォーターフットプリント
ーサプライチェーンでの水利用リスクの分析ー

我が国における生産・消費には他国で生産されたモノやサービスが欠かせなくなっています。こうしたサプライチェーンに隠れた水消費量を算定し、それに伴う環境リスクや事業リスクを分析するための手法を開発しています。

日本のサプライチェーンに隠れた水消費量の分布

図1 日本のサプライチェーンに隠れた水消費量の分布

流域レベルでの1m<sup>3</sup>の水消費による環境影響

図2 流域レベルでの1m3の水消費による環境影響

 

(2) 水素サプライチェーンのライフサイクル評価

水素を利用する際には温室効果ガス(GHG)を出しませんが、再生可能エネルギーや化石資源から作った水素を利用するまでに運ぶ間に様々なエネルギーや物質が投入されるため、間接的にGHGを排出します。この研究では、海外で作った水素を、液化水素(LH)、メチルシクロヘキサン(MCH)を使って日本に運び、水素ステーションで燃料電池車に充填するまでのサプライチェーン全体でのGHG排出量を算出しています。この結果は、水素社会の実現に向けて必要となる低炭素水素サプライチェーンを作るための、技術開発上の課題を抽出するために用いられています。

図3 水素サプライチェーンの一例

図4 燃料電池車用水素サプライチェーン全体からのGHG排出量の試算例

 

(3) 持続的な金属資源利用に向けた評価

我が国における技術の導入と産業の発展において、金属資源の確保と有効な利用は重要な課題であり続けています。近年では鉱石採掘時の環境負荷やクリティカルマテリアルのリスクも注目されており、当グループではこれらの課題解決に向けた研究に取り組んでいます。

持続的な金属利用のためには、海外から調達する天然資源のリスクを見極めながら適切な国内資源循環システムを構築するのが有効です。資源リスクを定量化するクリティカリティ評価が欧米では継続的に実施されていますが、当グループでは日本固有の資源リスクとクリティカルマテリアルの特定を目指しています。ここでは、資源リスクとして従来考えられてきた様々な要素に加えて、資源権益など新たな要素を加味したクリティカリティ評価の枠組みを構築すべく、メーカーやリサイクラー、政府機関など様々なステークホルダーと議論を進めています。また、レアメタルを中心としたマテリアルフロー解析によって製品ごとの金属含有量データを時系列で蓄積することで、将来のリサイクルポテンシャルを推計するとともに、IDEAの拡張をおこなっています。産総研では9つの研究部門による横断的な戦略的都市鉱山研究拠点SUREにおいて国内資源循環の促進に向けた取り組みを積極的に進めており、当グループの研究結果に基づいた資源戦略の提示とリサイクル技術開発が期待されています。

日本における主要金属のクリティカリティ(2012年)

図5 日本における主要金属のクリティカリティ(2012年)

 

クリティイカリティ評価とマテリアルフロー分析に基づいた資源戦略の概念

図6 クリティイカリティ評価とマテリアルフロー分析に基づいた資源戦略の概念

(4) バイオマス利活用システムのライフサイクル評価

バイオマスは、大気中のCO2を吸収・固定化するという温室効果ガス排出削減効果だけでなく、再生可能資源としての利用が注目されています。バイオベース製品を製造するために、化石資源を利用したときよりも多くのエネルギーを投入してしまうのでは、経済性や環境性の観点から望ましくないので、新しいバイオベース製品を開発・導入する際には、ライフサイクルアセスメント(LCA)の視点による影響評価を行いながら進めることが重要です。当グループでは、バイオマスの生産、利用から廃棄に至るプロセス(図7)について、LCA分析手法を用いて、主に環境側面の評価を実施しています。

バイオマス資源の利活用プロセス

図7 バイオマス資源の利活用プロセス

 

モデルケースとして、分子複合材料の補強材として高いポテンシャルを有しているセルロースナノファイバー(CNF)をバイオベース材料として利用することを想定し、木質バイオマスの採収からCNFの生産プロセスまでを対象に、インベントリデータを収集・作成して環境影響評価を行った結果、温室効果ガス(Greenhouse Gas, GHG)排出量は既存の石油由来のプラスチックと同水準であることから、CNFのバイオベース材料としての利用可能性が示されました。さらに感度分析を行うことにより、対象とするプロセスの開発にあたって注力すべきポイントや目標値の設定基準などについて指標を得ることができます。本プロセスにおいては、粉砕プロセスの消費エネルギーの環境負荷へ与える影響が大きいことから、今後、粉砕技術の開発を重点的に進めることが重要になると考えられています。CNFはその補強材としての性質から、自動車用途としての利用が期待されているため、自動車に使用されるプラスチック・ゴム部品へCNFを強化材として利用することにより得られる、薄肉化・高強度化に伴う環境影響効果についても検討しています。
また、バイオマスの利活用にあたっては、持続可能なシステムであることが求められます。現在、バイオマスの持続可能性基準を基に、環境性および経済性に加えて、社会性(潜在的リスク)を考慮した LCA手法による持続可能性評価についても検討しています。

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