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部門長挨拶 2008年

所信表明:安全科学研究部門長 中西準子

中西部門長2008

2008年4月1日に、産総研内に安全科学研究部門が設立され、私がこの研究部門長の任を担うことになりました。本研究部門が目指す「安全科学」は、巷間で広く使われている「安全」に留まるのではなく、「安全」と「持続可能性」を同時に求める科学です。

地球環境問題が大きくなる中で、「安全」の社会的な意味を広げる、さらに言えば、書き換える必要があるという認識の下に、「安全科学研究部門」を設立しました。研究部門の英語名は、Research Institute of Science for Safety and Sustainability(略称RISS:リス)です。この英語名には、安全科学にかける思いを具体的に表現しました。

安全科学研究部門の設立は、まさに時代の要請に応えたものであると感じております。時代の要請と言っても、誰もが、こういうものが必要だと考えているということではないのです。時代の変化のいくつもの「つぶやき」のようなものに耳を傾け、それを形にしたものです。これは、産総研だからこそできたと考えます。

産総研だからこそと言いますのには、二つあります。一つは、時代の要請を聴き取る感受性の高さです。

もう一つは、その要請があると感じた時に、組織の改変や、人員配置の変更をいとわず、新しい体制を作ることです。作れることです。とても、他では真似のできないことです。

私が言う時代の要請とは何かについて、少し、もどるようですが、お話したいと思います。

第1は、安全体制の綻びと、より確かな安全を求める社会の要求です。

第2は、地球環境問題や資源の枯渇への対応、つまり、地球や人間の将来に対する問題が目の前に現れてきて、今、手を打たねばならない時期にきていることです。

第3は、あらゆる場面で、「評価」が必要になっていることです。

第1も、第2も声高に語られていて、決して「つぶやき」ではありません。しかし、大事なことは、第1と第2の課題は、往々にして矛盾し、トレードオフの関係にあり、それらを如何に調節・統合し、「管理原則」を出していけるかこそが課題だということです。

つまり、一つひとつの要求は声高ですが、それだけではなり立たないのです。その二つをきちんと見据えて、一定の結論を出すことが求めれている、それこそが「時代の要請」なのです。

第3は、「評価」の重要性です。単独の目的のための意思決定は、優先順位を決めるにしても比較的容易です、しかし、大きな課題は、すべてと言っていいほど、複数の要因をどう調整するかですから、その調整した結果の評価は、非常に難しく、やはり、評価学というようなかたちで取り組まねばならなくなっているのです。

評価が必要になるのは、複数の要因がからんだ問題が多くなってきたことに加え、意思決定過程の透明化、説明が必要になっていること、国民に向けた説明だけでなく、国際的な面でも強く必要とされているということです。この分野では、人文社会科学の研究者の参加もどうしても必要です。

こういう時期に、評価を主要な課題にし、いかも、安全と持続性を標榜した研究部門ができるのは、産総研として誇るべきことと考えています。

2008年3月末まで存在した3研究ユニット、爆発・安全研究コア、化学物質リスク管理研究センター、ライフサイクルアセスメント研究センターを統合し、他の研究ユニットからの新しい研究員を加え、さらに産総研内の他の評価部門との連携を視野に入れてこの研究部門が作られました。

研究目標を5項目挙げておりますが、基本的には、従来築き上げ、信頼されてきたそれぞれの研究センターが担ってきた評価の仕事を進めることと、それらを融合し、新しい課題に取り組むことの二つを進めることです。

そして、この研究部門を代表する4課題を当面の部門のプレゼンスを示す部門プレゼンスプロジェクトと指定し、世に成果を問う課題にします。

1) physical hazard評価(PL:飯田光明)

2) 工業ナノ材料のリスク評価(PL:蒲生昌志)

3) 有害性と資源性をもつ金属(特に鉛)のサブスタンスフローシミュレータ(PL:東野晴行)

4) バイオマスエネルギー開発利用の評価(PL:匂坂正幸)

これらの、3)と4)はこの組織統合があってこそでてきた課題です。

この研究分野は、基本的に応用科学であり、社会的な要請に応えなければなりませんので、通常の研究部門よりは、プロジェクト重視になると思います。しかし、同時に、今、評価の基礎科学が大きく変化の兆候を示していますので、それに対応し、或いは先導するためには、どうしても理論面を強くする必要があります。その意味で、部門は基礎的な研究にも重きをおいた研究を進めたいと考えています。

温暖化の問題が毎日のように報道されておりますが、本研究部門は、評価技術を武器に、確実に温暖化ガス排出抑制に寄与できると考えています。このことで地球環境問題の解決に貢献できるモデルを作りたい、安全科学研究部門の仕事として形にしたいと思っています。

2008.06.25 中西 準子