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ポリシーステートメント2010

安全科学研究部門ポリシーステートメント 2010年度

 


2010年4月23日
研究部門長 中西準子

1.ユニットのミッション

 

1-0.ユニットからのメッセージ

       -評価なくして安全なし-
              -評価なくして持続可能性社会なし-
                     -評価なくしてイノベーションなし-

1-1.安全・環境保全のための評価専門の研究部門

 本研究部門は、2年前に化学物質リスク管理研究センター(CRM)、ライフサイクルアセスメント研究センター(LCA)、爆発・安全研究センター(コア)の3研究センターの統合を核にして形成された歴史的経緯から、化学物質によるリスク評価・管理、ライフサイクル解析(持続可能性評価を含む)、爆発安全評価・管理研究が基盤となっています。これまで、爆発安全、環境リスク、ライフサイクル評価の分野で3研究ユニットがそれぞれ開発してきた評価技術、評価に必要なデータの収集と策定、及び評価結果については、高い信頼性が寄せられ、しばしば国や自治体、産業界の意思決定の基礎となりました。このような確実なデータや評価結果を提出できる機関が非常に少ないこと、また、中立性が求められるが故に、国の研究機関としての期待が大きいこと、評価の必要性は日増しに大きくなっていることに鑑み、引き続き実証や調査での検証を支えにした信頼性の高い結果を提出し続けることが、まずは、本研究部門に対する第一の社会的要請であると考えています。
 本研究部門が目指す「安全科学」は、巷間で広く使われている「安全」に留まるのではなく、「安全」と「持続可能性」を同時に求める科学です。地球環境問題が大きくなる中で、「安全」の社会的な意味を広げる、さらに言えば、書き換える必要があるという認識の下に、「安全科学研究部門」は設立されたのです。研究部門の英語名、Research Institute of Science for Safety and Sustainability(略称RISS:リス)は、安全科学研究部門にかける我々の思いをより具体的に表現しています。

1-2.研究開発の方向性-守りの安全から、躍進のための安全へ-

 今の時代は、個々の安全問題に真摯に取り組めばいいという状況にはありません。現在または近未来での安全問題の一方で将来を見据えた地球環境問題、資源枯渇問題、つまり持続可能性問題が深刻になっています。しかも、これらの多様なリスクが相互にトレードオフの関係にあることが多いのです。つまり、我々は個々のリスクの評価、対策に取り組みながらも、同時に複数のリスクのトレードオフ問題をどのように解決していくべきかという、困難な課題に直面しているのです。このような状況を考慮し、3研究ユニットが個々に研究を進めるだけでは問題の解決には到達できないものと考え、他の評価部門とも連携をとりながら統合して研究を進めていきます。統合的な研究なくして、リスクトレードオフの問題の解決はありませんし、また、リスクトレードオフ問題への斬り込みがあってこそ、イノベーションのための評価が可能になるのです。

1-3.ミッションのブレークダウン

本研究部門のミッションをやや具体的に書けば、以下のとおりです。
(ミッション1)環境保全・安全のための評価手法を開発し、確かなデータを提示する。
 産業災害・環境リスク、ライフサイクル評価の分野で影響評価手法を開発し、同時に評価に不可欠となる信頼性の高い基盤データを収集し、これらを蓄積しつつ適切な解析を行うことにより、評価結果を公表する。
(ミッション2)融合研究とリスクトレードオフ解析の研究を進める。
 従来の3研究ユニットの枠に捕らわれることなく、領域融合的な課題に取り組む。安全性、環境リスク、持続可能性、経済的影響などの多様なリスクを評価し、複数の拮抗するリスク(リスクトレードオフ)の最適化を図るための評価の枠組、戦略論を発展させる。
(ミッション3)持続可能性社会構築に関する評価手法の確立し、普及を図るため研究を行う。
 気候変動、資源、生物多様性など、持続可能性社会構築のために必要となる評価技術の確立とその社会での活用方法について、実践的検討を行う。
(ミッション4)イノベーションを促進するためのリスク管理戦略を構築する。
 新技術の社会受容性、産業保安、環境分野でのガバナンス戦略などの分野で、理工学・社会科学・人文科学の境界を超えた、しかし現実的で政策提言につながる研究を行う。ひいてはイノベーションを促進し、産業の国際競争力の強化に貢献する。
(ミッション5)データや評価結果の発信と社会での活用の道筋をつける。
研究活動により蓄積されたデータ、開発した解析ツールなどを使い易いかたちで社会に提供し、評価結果の公表により、市民・地域・産業・行政、および国際機関などの合理的な意思決定・基準策定を助ける。

1-4.産総研ミッションとの関係

 産総研の第3期中期計画(平成22~26年度)では、安全科学研究部門の研究は、「Ⅰ-6.持続発展可能な社会に向けたエネルギー評価技術、安全性評価及び管理技術・・」の中に位置づけられています。この中でも、(2)持続発展可能な社会と産業システムの分析、(3)先端科学技術のイノベーションを支える安全性評価技術、安全管理技術、(4)産業保安のための安全性評価技術、(5)化学物質の最適管理手法の確と「Ⅳ-2.社会の持続的な発展を支援するデータベース」の中にいちづけられています。
 1-2.で述べましたが、基盤的なデータや技術の提供と、評価手法の開発、新しいガバナンスの考え方の提示を通して、この課題を遂行します。
 また、これまでも、産総研の出すデータ、評価結果は、公平で中立的なものであるという評価を勝ち得ていますが、国立研究機関であるからこその信頼性を裏切らないよう、中立性に留意します。また、評価結果が、行政などの施策に用いられるだけでなく、国際標準にまで成長させるべく努力します。

2.研究開発の方針

2-1.中期目標・計画を達成するための方策

  現在進めている研究プロジェクトを責任持って進め、そのプロジェクトの当初計画目標を達成することは当然であるが、それ以外に、いくつか考えなくてはならない点があります。
 「グリーンイノベーションのための」と「ライフイノベーションのための」という課題を、いつか、そういう目的に貢献できる研究と位置づけるのではなく、少なくとも相当近い時期(5~10年程度)に、イノベーションを起こすことができる方策をもった研究計画と解釈して取り組みたいと思います。
 そのために、まず、社会の意思決定に使える結果を出すことが我々の目的であることを明確に意識することが肝要と考えます。その上で、内部・外部のreviewを徹底し、つぎには、評価結果を社会で生かすための、理論とか考え方を同時に出す必要があるのだという意識を持つことが重要と考えています。
 具体的は、短期評価や長期評価で、評価結果の活用度については、大きなポイントとして考慮します。
 中期計画を実行するために、また、健康管理のためにも研究員のeffort管理は極めて重要と考えています。

2-2.h32年度の重点化方針

1)研究課題の重点化
 ①ナノ材料のリスク評価研究
 現行のNEDOプロジェクト「ナノ粒子の特性評価手法の研究開発」を終了させ、ナノ材料リスク評価についての一定の方針を出します。と同時に、22年度から始まるナノテクアリーナについての研究プロジェクトを軌道に乗せ、さらには、新しいプロジェクトを23年度に立ち上げる準備をします。産総研内分野融合プロジェクトも進め、国際標準化のための活動に力を入れます。
 ②カーボンフットプリント事業を支援するためのデータ収集や構築の活動に協力すると同時に、この事業の意味づけ、さらには、社会受容性拡大のための研究を実施します。本件も、国際標準化、アジア展開が課題になっており、その活動を活発に展開します。
 ③フィジカルハザード評価研究
 22年度、23年度に大きな外部からの委託研究「火薬庫安全性特認対応研究」「火薬類取締法の見直し等に係わる火薬類保安行政対応研究」などがあり、それに注力します。危険物の評価の国際統一化(GHS)を考慮した新たな取扱技術基準や保安技術基準作成に必要なデータの取得に力を入れます。
2)基本方針
 個別領域内での整合性、正確さだけでなく、リスクトレードオフを考慮した融合的立場での評価や提言ができるように、一つでも成果を出す。いずれも、国際化活動を重視する。

3.運営方針と体制について

3-1.研究組織の体制

  研究部門は、それぞれの専門を極め、若手研究者が育ち、さらに研究部門の理念や社会のニーズに応じてプロジェクトを遂行するための組織とします。そのために、研究グループは、専門領域、要素技術を基準に組織し(縦構造)、プロジェクトはグループ横断的に組織します(横構造)。融合研究は相当進んできました。この動きを推奨することが肝要と考えています。
 部門長・副部門長・コア代表、主幹研究員で経営会議を組織します。部門の運営は、経営会議と研究グループ長会議(GL会議)での討議を中心にして進めます。
 現在、10の研究グループが作られており、グループ長はグループ運営の任を負います。グループ長は、任期制とします。
 組織としてのリスク管理やコンプライアンスが重要な課題になっている現状に鑑み、研究部門の管理組織の重要なユニットとして班を作ります。基本的に研究Gと重なるように作り、すべての所属者は、必ず、どこかの班に属することとする。班員の意見をとりまとめ、GL会議に反映すると同時に、部門として遂行すべき事柄の伝達、執行の責任を負います。
 尚、爆発安全研究分野の重要性、外部へのメッセージ性を意識して、「爆発安全研究コア」をおいています。外部からの期待が大きい領域ですが、それを支える安全科学研究部門内の体制が脆弱化しつつあり、本研究を支える体制の再構築は必須の課題です。コアのあり方について、2009年度に行った議論を基に研究員との討議をしながら2010年度に改革を実行します。

3-2.他ユニットとの協力について

 現在進めている研究プロジェクトの多くで、他ユニットとの共同研究が実施されています。また、いくつかの研究ユニットから共同研究の申し出があり、今後も連携して研究を進める努力をします。
  他大学、他研究機関、民間企業との共同研究も進めます。
 NEDO プロジェクトで進めております「ナノ粒子の特性評価手法の研究開発」では、産総研内の5研究ユニット、5大学との共同研究を進めてきましたが、今年度の融合重点「ナノテクリスク」研究も、3研究ユニットとの共同で進めています。

3-3.国際的な共同研究

 ナノリスク研究では、引き続き、OECDでの活動に積極的に参加し、また、米国のNIOSHとは密接に意見交換しつつ研究を進めます。また、バイオマス研究では、引き続き、タイを中心に東アジアとの連携を深めます(タイとの間には、人材交流、共同研究、技術指導などを行っています)。また、国連危険物輸送専門家委員会などで積極的に情報発信します。

4.リスク管理に関する基本的考え方と具体的な取り組み

 本研究部門の主たる構成要素となった3研究ユニットの性格が、リスク管理の面から見て、性質が異なることから、リスク管理問題への取り組みは難しい面がありますので、この点に注意しつつ、以下のリスク管理に取り組みます。
1)研究員の安全が脅かされるリスク
 爆発安全コアでは、実験に伴う安全性(薬品の扱い、実験の進め方)の問題が最も大きなリスクと認識しています。08年度、コアの安全管理問題につきましては相当徹底的な対策がとられました。しかし、まだ問題がかなり残っており、引き続き対策を継続します。老朽化で危険度の増していた中央第5事業所の爆発ピットの大規模改修が進むことになり、格段に安全体制が強化される筈です。さらに、安全管理の目標の引き上げに努力します。
 昨年度に続き、相互巡視(異なる専門の研究員による巡視)などを行い、整理・整頓、スペースの適正配分などのレベルから、もう一度安全問題を見直すことにします。
2)研究員の権利が侵害されるリスク
 知財や情報流出などのリスクを防ぐ対策をとります。
3)研究方法や、成果の社会的責任が果たされないリスク
研究部門全体で、信頼されるデータや評価結果の提出が求められていることから、情報の信頼性確保、その点検、さらには情報発信の際の注意と点検が必要と考えています。昨年度と同様、研究成果は、チェックなしに発表することができないとうルールを徹底します。

5.コンプライアンスに関する考え方

 コンプライアンス問題に対しては、部門トップが率先することが最善の方策と考え、経営会議メンバーがまず、積極的に取り組みます。
必要とされる倫理感、ルールなどが工技院時代のそれとは大きく異なること、したがって、従来通りに進めれば、重大なルール違反になるとの認識が欠如していることが、インコンプライアンス問題の根元と考えています。ルールが大きく変化しているのは、産総研の組織の性格の変化だけでなく、外側の社会の意識の変化が大きいということを認識しなければならないと思います。
従来のしきたりの徹底的な見直しを進めたいと思います。と同時に、ルールが現状に合わず、研究を円滑に進めることのできない場合には、ルールの改善を求める動きを外部に対して行いたいと考えます。

6.成果の普及

 成果の発信・普及に努力します。
 部門ホームページを充実させます。

7.個人評価の方針

7-1.短期評価(基本は昨年度と同じですが、⑥を加えました)

①短期評価は、グループ長(GL)による評価と研究部門長による評価を考慮した総合評価とします。(GLによる評価は、年度はじめに出された目標の達成度を基に評価を行う)。部門長による評価は以下のような考え方で行います。
②短期評価は、年度内に出された成果(evidence付き)を基に行います。
③部門長は、年度初めに、以下の3項目について申請された各自のeffort(年間計画に書く)に応じた比率で評価を行います。
 ・基礎研究(主として論文等で評価)
 ・プロジェクトへの貢献、成果(evidenceが必要)
 ・社会への貢献(外部での活動)
④短期評価の結果は業績手当の査定額に反映させます。
⑤年度のはじめに、研究グループの研究計画が確定する前に、部門長(1人で対応)による個人面談を行います。
⑥研究プロジェクトや共同研究については、その個人の果たした役割、そのレベルを証明できるevidenceが必要です。この点にご注意ください。

7-2.長期評価

①長期評価は、これまでの実績に加え、マネージメント能力、指導者としての発展性などを加味して行います。

8.人材育成の取り組み

8-1.研究部門内での取り組み

  研究員は、一定の専門性を身につけると同時に、融合的な課題で研究開発できるようになるべきであるとの考えに基づき、若い研究員を育てることを基本的な課題とします。
<若手研究員をエンカレッジするための手立て>
①研究グループは専門性を重視して組織し、プロジェクトはグループ横断的に組織することを基本としています。研究グループは、若い研究者が専門領域のスキルを身につける場です。
②若手研究者の自発性を応援する意味で、昨年度「部門内科研費制度(仮称)」を作りました。これも継続します。
③My Paper(Presentation)を実施します。筆頭著者による論文(英文、査読有り)が発表された折、それを発表する機会を用意します(部門長出席)。これを短期評価に反映させます。
④短期評価を通して、研究の方向性に関する議論を行います。
<融合的課題の指導者育成>
 分野融合的な研究課題をマネージできる幹部研究員の育成に力を入れます。そのためには、筋の良い分野融合的なプロジェクトを立ち上げることが重要で、その仕事は部門長の仕事と考えています。

8-2.外部人材の育成

 多くの大学、国際機関の活動に協力します。
また、外国との共同プロジェクトでの、人材交流に協力します。
経産省とも協力して、企業の人材育成に資するプログラムに参加します。