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用語の解説

リスクトレードオフ解析で用いる用語を解説します。

AIST-ADMER
産総研−曝露・リスク評価大気拡散モデル。(独)産業技術総合研究所が開発した,化学物質の大気環境濃度推定および暴露評価を行なうモデルと一連のシステム。産総研安全科学研究部門のホームページ(http://www.aist-riss.jp/)から無償でダウンロードできる。
AIST-RAMTB
産総研−東京湾リスク評価モデル。(独)産業技術総合研究所が開発した,化学物質の海水中濃度および底泥中濃度を算定し,生物へのリスク評価を行うモデル。他に,伊勢湾(RAM-IB),瀬戸内海(RAM-SIS)を対象としたモデルもある。産総研安全科学研究部門のホームページ(http://www.aist-riss.jp/)で公開されており,郵送によるCD-ROMの配布を受け付けている。
AIST-SHANEL
産総研−水系暴露解析モデル。(独)産業技術総合研究所が開発した,化学物質の水系環境濃度推定および暴露評価を行なうモデルと一連のシステム。産総研安全科学研究部門のホームページ(http://www.aist-riss.jp/)から無償でダウンロードできる。
ECETOC
European Centre for Ecotoxicology and Toxicology of Chemicalsの略。化学物質より生ずるヒト健康や環境への潜在的な影響を最小化するため,化学物質を扱う欧州産業界が設立した非営利団体。化学物質の有害性情報等をまとめた技術レポートや科学的文書を作成し,産業界に情報を提供している。ECETOC Aquatic Toxicity(EAT)という生態毒性データベースがあり,368物質122種類の水生生物に対する毒性値が収録されており,ECETOC技術レポートNo. 56(1993)として公表されている。
ECOTOX
ECOTOXicologicaldatabaseの略。米国環境保護庁が開発した,化学物質による生態影響に関する知見を提供する包括的なデータベースシステムで,インターネット上で閲覧できる。米国環境保護庁が,化学物質による生態影響に関する既知見を収集・レビューし,水生生物,陸生植物,野生動物に関する毒性データがそれぞれAQUIRE,PHYTOTOX,TERRETOXの3つのデータベースに収録されている。このデータベースは継続的に更新されている。
EMアルゴリズム
不完全データ(欠測値があるデータ)から最尤推定値を導くための統一的で汎用的なアルゴリズムである。データの不完全性に対する解釈が柔軟であり,自在に適用モデルを拡張できる特徴がある。これを用いることにより,欠測値のあるエンドポイント,動物種,化学物質をも含めたモデルをつくることが可能。
ESD
排出シナリオ文書
GIS
地理情報システム
in vitro試験
動物個体を用いるのではなく,動物やヒトに由来する培養細胞を用いた試験のこと。in vitroは,もともとガラス(試験管)の中の意味。
IUCLID
International Uniform Chemical Information Databaseの略。欧州各企業が提出した化学物質の有害性情報等のデータを欧州委員会欧州化学物質事務局(European Chemicals Bureau)がデータベース化し,欧州における化学物質の登録,OECDのHPV(高生産量)プログラムの有害性初期評価(SIDS)で利用されている。IUCLIDデータベースは,化学物質に関する一般情報からリスク評価まで7つの章で構成されている。生態毒性については,Chapter 4に各種生物に対する毒性値が収録されている。
OECD
Organisation for Economic Co-operation and Development(経済協力開発機構)の略。OECDでは,環境問題への関心の高まりを受け,1970年代から化学物質の試験方法の確立,化学物質管理を効率的かつ有効に行うための取り組み等を継続している。
OECD暴露評価タスクフォース
OECD全体の化学物質関係を統括する意思決定機関である化学品委員会および化学品・農薬・バイオテクノロジー作業部会合同会合の下部で活動している12の作業グループの1つ。暴露評価を行うに際しての技術的なガイダンスを提供するために,主に以下の活動を行っている。
  • 特定の産業または化学物質の使用カテゴリーの排出シナリオ文書の作成
  • 暴露モデルのデータベースの開発
  • モニタリングデータを暴露評価に用いる際のガイダンスの作成
PRTR
Pollutant Release and Transfer Register(化学物質排出移動量届出制度)の略称。ヒトの健康や生態系に有害なおそれがある化学物質について,事業所からの大気・水域・土壌環境への排出量および廃棄物に含まれる移動量を事業者が自ら把握して国に届出をおこない,国は事業者からの届出データや推計により排出量・移動量の集計をおこない公表する制度。日本では1999年7月13日に公布された「特定化学物質の環境への排出量の把握等および管理の改善の促進に関する法律」(化学物質把握管理促進法:化管法)により制度化され,2001年4月から実施された。
QALY
質調整生存年数
QOL
生活の質
QSAR
Quantitative Structure Activity(定量的構造活性相関)の略。化学物質の毒性とその構造や物性の間の定量的な関係を意味する。この相関を導出し,化学物質の有害性を予測するモデルをQSARモデルと呼ぶ。これまでに数多くのQSARモデルが開発されている。フリーのソフトウェアとして開発,配布されているものに,米国環境保護庁のECOSAR(ECOlogical Structure Activity Relationships)や(独)国立環境研究所の生態毒性予測システム(KAshinhou Tool for Ecotoxicity,KATE)がある。
REACH
既存化学物質の安全性評価が進まないこと等を克服するため,欧州において2007年6月に施行された新たな化学物質規制への取組。REACH規則の主な特徴として,既存化学物質と新規化学物質の扱いをほぼ同等に変更,これまで政府が実施していたリスク評価を事業者の義務に変更,サプライチェーンを通じた化学物質の安全性や取扱いに関する情報の共有を双方向で強化,成型品に含まれる化学物質の有無や用途についても情報の把握を要求する等がある。
Read across法
対象とする事象空間全体を俯瞰的に見渡して意味を読み取るデータマイニング手法の総称。クラスター解析等もこの手法の一つ。
因果モデル
実験データに基づいて統計的に推定されたエンドポイント間の因果順序や関連の強さを表すモデル。回帰分析がよく知られているが,本事業で提案する共分散構造分析・ベイジアンネットワークはパス図を明示することで視覚的な理解を助ける。
エンドポイント
リスクを評価する対象として設定する事象(特定の病気の発病,あるいはそれによる死亡等)。
押出し加工
コンパウンドの引き延ばし工程のような押出加工は閉鎖工程とみなされている。この工程は,パイプや異形,シート,ワイヤーコーティングのような製品製造に用いられる。これらの状況では押出加工品が金型から出てくるのとほとんど同時に急冷される。
階層的ベイズ法等
伝統的な統計では,データはある真の分布から得られる確率変数であると考えるが,ベイズ統計ではデータが真であると考え,分布のパラメータ(平均や分散)が確率変数であると考える。新たなデータが加わるたびに,データを最もうまく説明するパラメータをベイズの定理を用いて推定する。データが加わる前の分布を事前分布,後の分布を事後分布と呼ぶ。階層ベイズはこの過程を多段階にしたもので,事前分布のパラメータがある分布(超事前分布)に従う確率変数であると考え,ベイズの定理を多段階に組み合わせてデータから推定を行う。
ガウシアンネットワーク
ベイジアンネットワークを実際に適用する場合に連続変量を扱うための手法。確率密度関数として正規分布(ガウス分布)を用いる。化学物質の投与量は連続変数であるために,ガウシアンネットワークを用いることは妥当と思われる。
確率密度関数
例えば,体重のように集団内の個人間で変動があるような変数について,その変動を確率分布で表現する際に用いられる関数。数学的には,確率変数Xの累積分布関数F(x)が微分可能な場合,その導関数が確率変数Xの確率密度関数である。
カレンダリング工程
プラスチック製品の製造に用いられる中で最も複雑な操作。この加工は予備配合や混合から始まり,その結果,生成し,予備加熱された化合物は,いくつかのロールから成るカレンダーに送り込まれ,溶けて柔らかい化合物を薄いレイヤーに圧延する。この方法はフィルムシートの製造や布をコーティングする際に用いられる。
換気回数
居室等の室内空間の空気が一定時間内に入れ替わる回数。単位は「回/時間」であるが,一般的には換気係数と同じ意味で使われることが多い。
換気係数
換気回数と同じ意味だが,単位が「回/時間」ではなく,一時間当たりの換気量を空間容積で割ったもので「1/時間」で表現する。
環境動態
大気,水,土壌等自然環境における,移流,拡散,分解等の物質の振る舞い。
環境排出量
大気,水,土壌等の環境媒体へ発生源から物質が排出される量のこと。
環境媒体
環境を構成する大気,水,土壌,底質,生物等の要素。
環境媒体間移行暴露
ある環境媒体中の化学物質が,他の媒体に移行し,その移行先の媒体によりヒトが被る暴露のこと。
環境モニタリングデータ
測定された環境媒体中の化学物質濃度のこと。
規制影響評価
法規制の導入,改訂,廃止の際に,それが経済,社会,環境に与える影響を予測し,できる限り定量的に表現すること。結果は,費用効果分析や費用便益分析の形で示されることが多い。米国では1980年代,英国では1990年代,欧州でも2003年から制度化された。日本では2007年10月から義務付けが始まった。
揮発性有機化学物質
常温常圧で大気中に容易に揮発する有機化学物質の総称。揮発性有機化合物ともいう。略称は,VOCs,VOC。
基本データセット
化学物質の生態毒性影響推定手法を開発するために必要な検討用ソースデータ。本事業では,5つの用途群物質やそれらの構造類似物質を対象に,国内外の既存生態影響データベース(ECOTOX,IUCLID,ECETOC,環境省)やリスク評価書(NEDO,化学物質総合評価管理プログラム「化学物質のリスク評価およびリスク評価手法の開発」プロジェクト)から,各種水生生物種(魚類,ミジンコ,藻類)に関する有害性情報(LC50やEC50,NOEC等),各物質の物性および構造に関する基礎情報を収集・作成したものが該当する。
吸着係数
吸着剤への化学物質の吸着の強弱を表す指標。数字が大きいほど吸着しやすい。化学物質の濃度上昇や濃度減衰等のチャンバー試験におけるデータから推定する。
クラスター解析
いくつかの属性を持つ事象を,属性の類似性により分類し,意味のあるものを見いだすデータマイニング手法の一つである。類似度を規定するアルゴリズムにより,7つの手法(最近隣法,最遠隣法,メディアン法,群平均法,重心法,ウォード法,可変法)に分類される。
グリッド
格子。メッシュとも言われる。濃度分布等を離散的に計算する場合の最小単位。例えばAIST-ADMERでは5 km×5 kmであり,この解像度で分布が得られる。
クロス集計
カテゴリーデータを含む2つの項目の関連性を明らかとするための解析方法の一つ。行と列に異なる項目を配置し,集計する。
光化学反応
物質が紫外線や可視光により励起されることに因る化学反応。大気汚染物質の一つであるオゾンは,主として二酸化窒素(NO2)の光化学反応により生成する。
個体群存続影響解析
生物個体群存続の観点から生態リスクを評価する際に使用される。個体群存続解析は,実験室内で得られた化学物質の毒性値を用いて,その対象試験生物の個体群動態を解析し,個体群増殖率(λ)が1となる時の化学物質濃度を生物個体群存続影響の閾値濃度として求める過程である。野外環境での個体群の存続に対しては,不確実性係数を考慮する必要がある。
三次元オイラー型の気象・拡散モデル
大気空間を三次元のグリッド(格子)で区切り,各グリッド間の物質の移流拡散を時間積分により,数値的に解くタイプの大気拡散モデル。このタイプのモデルでは,局地気象を再現する詳細なメソスケール気象モデルや数十〜百物質の反応式を同時に解く詳細な化学反応モデルが,組み合わされるのが一般的である。
日本産業洗浄協議会
オゾン層破壊物質全廃と地球環境保護を推進し,工業洗浄分野における問題の早期解決を図るため,洗浄剤・洗浄装置・周辺装置等の関連企業と団体により,産業洗浄に関する情報収集・調査・技術開発・研究・普及等を主な業務として1994年4月に設立された協議会(社団法人)。産洗協と略されることもある。
質調整生存年数
近年,医療分野において用いられることが多くなった健康指標。余命年数だけでなく,その生活の質(QOL)を加味していることが特徴。健康状態のQOLは,死亡を0,通常の健康を1として,その間の数値で表現される。患者や一般人へのアンケートや,医療関係者の判断により数値が求められる。リスクの大きさは,化学物質暴露によるQALYの損失量,すなわち損失QALYの大きさとして表現されることになる。

図1 化学物質暴露による損失QALY概念図
室内暴露
室内に滞在する間に化学物質に接すること。広範には室内での接触による暴露等も含まれると考えられるが,一般的には,室内の空気を経由した暴露のことを指す。
社会経済分析
政策や事象が社会に与える影響を定量的に分析する手法であり,主に,費用と効果の関係について分析するものである。費用効果分析は,得られる効果をかけられる費用で割ることで相対的な効率性を判断する。費用便益分析は,得られる効果を金銭換算し,かけられる費用との大小関係で,絶対的な効率性を判断する。また,費用や効果の帰着を予測することで,分配面への影響の検討も可能となる。
重篤度
化学物質により生じる健康影響の程度のこと。生死にかかわるような疾病は重篤度が高く,自覚症状もないような変化は重篤度が低いと見なせる。
受動暴露
自らの行動によらず,通常の生活で受ける暴露。例えば,周辺の人の喫煙による暴露(受動喫煙)や,建材,壁材,家具等からの揮発成分による暴露がある。
種の感受性分布解析
化学物質に対する感受性は生物種ごとに異なり,避けたい事象(例えば,個体の死亡や繁殖阻害)を生起する濃度も一般的に,種毎に異なる。その種毎の感受性のばらつきを確率分布で表現したものを種の感受性分布と呼ぶ。一般に,対数正規分布が仮定されることが多い。
詳細リスク評価
化学物質の暴露を被る可能性がある集団全体の暴露分布を推定し,集団内の高リスク亜集団を確認するとともに,高リスク亜集団のリスク削減対策を提言するリスク評価。
初期リスク評価
化学物質の暴露を被る可能性がある集団の合理的最大暴露(RME)のみを推定し,リスクを判定する評価。暴露マージン(MOE)が所定の不確実性係数積(UFs)よりも大きい場合,集団全体として,リスクは懸念されないレベルにあると判断される。一方,MOEがUFsよりも小さい場合は,暴露集団の全体あるいは一部にリスクが懸念されることになり,詳細リスク評価が必要となる。
消費者製品暴露
消費者が製品を使用することによって受ける暴露。例えば,スプレーや電化製品,防虫剤等の使用時の暴露がある。
推論アルゴリズム
モデルを特徴づける未知パラメータ等を,データに基づいて推し測る(すなわち推論する)ための統計学的な数値処理の手続きや数式を一つのセットとして定めたもの。多種多様なものが存在し,データマイニングにおいて,計算の自動化や簡略化のため必要不可欠なものとなっている。
ステークホルダー
利害関係者のこと。狭義では,直接影響を受ける主体であるが,広義では,国民まで含める場合もある。
生活の質
一般的にはヒトの幸福度の包括的な指標であるが,特に,健康状態について用いられる場合(=健康関連QOL)は,特定の疾病に限定した使い方と,通常の健康を1,死亡を0として,様々な症状についてその間で点数を付けるという一般化された使い方とがある。
市中ストック量
経済学的には,ストックとは住宅総戸数,自動車の保有台数,預金残高等,経済財の存在量のことをいう。そこで,ある物質を含む製品が建築物や機械・電子部品として使用されているときに,その物質の市中における存在量のことをいう。
スプレッドコーティング
約180℃の熱風がでるトンネル型のオーブン内で溶融(ゲル化)され,その後空気で冷却される工程で,クッションフロア,壁紙,防水シート等はスプレッドコーティングによって製造される。
生態影響
化学物質が環境中に排出された後,生態系の中の様々な生物種に悪影響を及ぼすこと。生態系は植物から動物,微生物等多様な生物種を有するほか,様々な物質循環やエネルギーの流れといった複雑な非生物的要素が絡み合う高度な機能系である。このため,化学物質による生態影響を評価するには,実験室の中で生態系を構成する重要な生物種または代表的な生物種に対する生態毒性試験を実施し,その影響を把握することが一般的である。
生態リスクの尺度
生態リスクを特定するための評価エンドポイント。評価エンドポイントとは実際に守りたい生態系の重要な性質を明確に表現したもので,生態系の中の対象とその対象が備える推算・測定可能な特質によって表現される。この定義の下,これまでに,試験生物種を対象に実施した生態毒性試験結果(生態毒性データ)から,生物個体の生死(個体レベル),種の感受性分布,生物個体群の存続(個体群レベル)の3種類の尺度による生態リスク評価手法が確立されている。
絶対評価
その分析だけで,政策や対策の是非が判断できること。社会経済分析の場合は,費用便益分析がこれに相当する。
摂取量
ヒトの外部暴露境界である口を通過する一日当たりの平均的な化学物質量であり,消化器官に到達し得る最大化学物質量である。
前駆物質
化学反応において目的とする生成物の前段階にある一連の物質のこと。一般には1つ前の段階の物質をさす。例えば,環境中で生成するオゾンの前駆物質は,窒素酸化物(NOx)と揮発性有機化学物質(VOCs)である。
洗浄剤(工業用)
工業用洗浄剤とは,工業製品や材料等に対し,衛生的な品質,機能・精度の向上,剥離・エッチング等を目的として製品の汚れや付着物を除去するため使用される化学物質。本事業では機械・金属系業種で用いられる物質に限定して使用している。
  • 塩素系:ジクロロメタン,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレンが代表的。不燃性で油分溶解力が強い。蒸留再生可能,浸透性がよく,低コスト,乾燥性良好であるが,毒性が高く法規制対象という特徴がある。
  • 炭化水素系:ノルマルパラフィン系,イソパラフィン系,ナフテン系,芳香族系に大別される。油分溶解力が強く,蒸留再生可能。毒性が低く,引火性,乾燥が遅い。固形物汚れ・イオン性汚れには不向きで,金属腐食性は低いが,樹脂を侵食する場合がある。
  • ハロゲン系:フッ素系と臭素系がある。不燃,細孔浸透性がよく,乾燥性良好。塩素系と同じ設備が使用可,蒸留再生可能であるが再生ロスが多い。高コスト。フッ素系は低毒性であるが,臭素系は毒性に不明点がある。
  • 水系:無機・有機ビルダー,界面活性剤,防錆剤等で構成され,アルカリ性,中性,酸性に分類される。濃縮液や粉末で供給され水で希釈して用いられる。有機酸や無機塩類等の電解質に対する溶解力が優れ粒子汚れを容易に水に分散できる,細孔浸透性に劣る,乾燥が遅い,排水処理が必要,設備が大型になる,コストは比較的安価等の特徴がある。
  • 準水系:非水系洗浄剤で洗浄し,すすぎを水で行う可燃物型と洗浄剤に水を少量加えることで消防法上の非可燃物に対応させた非可燃物型に大別される。比較的低温で重質な油脂の除去が可能で,水溶性汚れも除去可能。洗浄工程が長く,乾燥が遅い。金属の防錆・樹脂の耐溶剤試験が必要。洗浄液は再生困難で,汚れ混入量以外に水分管理等洗浄液のメンテナンスが難しい。
相対評価
その分析だけでは,政策や対策の是非が判断できない場合に,同様の分析を実施した事例と比較することで,より望ましいかどうかを判断する評価法。社会経済分析の場合は費用効果分析がこれに相当する。
ソースコード
ソフトウェア(コンピュータプログラム)の元となるテキストデータのこと。プログラミング言語(Fortran, Basic, C言語等)に従って書かれており,コンピュータに対する一連の指示を記述したものである。
損失余命
化学物質暴露による余命の短縮のこと。化学物質暴露による健康影響の重篤度や健康リスクの大きさを,物質や健康影響の種類によらず定量的に比較可能にするため,Gamoらにより導入された。
表1 化学物質リスクの統一尺度(損失余命)による比較の例 (Gamo et al. 2003)
多変量解析
互いに関係のある多変量(他種類の特性値)のデータが持つ特徴を要約し,目的に応じて総合するための手法である。代表的な手法として,主成分分析,因子分析,クラスター分析等がある。
地域特性パラメータ
本事業で構築する環境媒体間移行暴露モデルで使用するパラメータの中で,地域特異的なパラメータを指す。例えば,気温,降水量,農作物の生産量等が地域特性パラメータとなる。
チャンバー試験
換気回数,温度や湿度が制御可能な容器(チャンバー)を用いて,建築材料等からの放散速度等を測定する試験。
直接暴露
発生源から直接暴露されること。例えば消費者では,化学物質が含まれる製品への接触,化学物質が放散する製品や化学物質を放出する製品からの吸入等による暴露。
地理情報システム
コンピュータ上に地形や建物の位置座標等の地理情報を持たせ,作成・保存・利用・管理し,地理情報を参照できるように表示・検索機能をもったシステム。
沈着
大気中に存在するガス状の化学物質や浮遊粒子に吸着された化学物質が地表面に移行する過程。降水に伴って生じる湿性沈着と大気の乱れや粒子の重力沈降等により非降水時にも生じる乾性沈着の2種に大別される。
データマイニング
大規模データから有用な情報を抽出すること。近年,計算機の発展・データベースの整備に伴い,データの収集・蓄積が可能となり,そこに内在する規則性や因果関係を見出す様々な統計手法が提案されている。
デフォルト
利用者が何も操作や設定を行なわなかった際に使用される,あらかじめ組み込まれた設定値。「初期設定」「既定値」等もほぼ同義。
統計的外挿モデル
得られたデータから統計手法を用いてモデルを定義し,得られたデータよりも広範囲の変数量の推定を行うこと。
動物試験
動物個体に化学物質を与えて,有害性の種類や有害性が生じる量について調べる試験のこと。ラットやマウスの齧歯類の動物が多用されるが,ウサギ,イヌ,サル等も用いられる。短期の高用量暴露による影響を観察する急性毒性試験から,長期の低用量暴露による影響を観察する慢性毒性試験,発がん性や生殖毒性等多様な試験がある。化学物質の種類や懸念される暴露経路に応じて,経口(消化器官を経由),吸入(呼吸器を経由),経皮(皮膚への塗布)といった投与方法がとられる。
毒性作用機序
有害性の機序
毒性等価係数
化学物質の有害性(毒性)の相対的な強さを数値として表したもの。代表的な化学物質の毒性の強さを1とした相対値として表す。ダイオキシン類の評価におけるTEF(Toxicity Equivalence Factor)が有名である。この場合,2,3,7,8-TCDD(テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン)を1としている。相互比較や加算が可能となる。
二次生成
大気中の反応によって,排出された化学物質から新たな化学物質ができることをいう。2次生成された化学物質による大気汚染を2次汚染(secondary pollution)と呼び,直接排出された物質による大気汚染(1次汚染,primary pollution)と区別することがある。2次汚染の典型的な例として光化学スモッグをあげることができる。
ニュラールネットワークモデル
動物の神経系を模した,非線形モデル。最小単位としてニューロンのモデルを持ち,ニューロンを多数組み合わせることで構築される。ニューロン間の結合係数を変えることでモデルの応答パターンが変わり,うまく結合係数を選ぶことで望ましい応答を起こすように学習させることができる。また,動物の認知システムと同様に,近い刺激にもある程度応答するという,般化性を持ち,この性質を利用し,隠れたルールを見いだすデータマイニングの手法に応用される。
排出係数
ある物質の排出量が何らかの量(活動量,重量,走行量,面積等)に比例するとみなされる場合の,その単位量当たりの着目物質の排出量。
排出シナリオ文書
化学物質の排出量推計を目的として,排出を定量化する手法・情報を一般化して記述した文書。化学物質について特定した用途において,製造(調合・加工),使用/消費,リサイクル/廃棄等のライフサイクルの各段階から,大気・水域等環境中への排出量が推計の対象とされる。
媒体間移行モデル
化学物質の移行元の環境媒体中濃度を基に,移行先の媒体(本事業では,土壌,植物,家畜)への移行量を推定し,さらに,移行先の媒体内での動態プロセスを考慮して,移行先媒体中の化学物質量や濃度を推定する数理モデル。
暴露
生体の外部境界(鼻/口/皮膚)での化学物質との接触
暴露係数
暴露濃度や摂取量を推定する際に使用される様々な係数や原単位のこと。
暴露濃度
ヒトの外部暴露境界である鼻付近の空気中の化学物質濃度。または,水生生物が生息する水中や底質中の化学物質濃度。
暴露評価
化学物質と接触に関する定量的または定性的な評価を意味し,吸入,経口および経皮暴露経路での暴露濃度や摂取量を推定すること。
光分解
物質が光を吸収して化学反応を起こし,別の物質に変化する現象。
非線形モデル
非線形項を持つモデル。通常,予測力は線形モデルよりも上がり,非線形項をより多く加えるほど予測力は上がる。しかしながら,加えた非線形項に何らかの意味があるのかどうかは別途議論が必要である。ニューラルネットワークは非線形モデルの一つ。
標準情報(TR)制度
わが国の「工業標準化法」に基づくJIS制度を補完する制度として創設された制度。(1)コンセンサスが得られない等の理由によりJIS制定に至らないが,将来JIS制定への可能性がある標準文書,(2)現時点では技術的に未成熟であるものの将来的に標準化の必要な分野における関連技術情報等を,標準報告書(TR)として公表する。
費用対効果
政策や対策によってかかる費用と,それによって得られる効果を比較すること。通常は,費用を効果で割って,1単位の効果を得るためにかかる費用,という形で表わされる。
不確実性解析
用いる情報の限界や,それらを組み合わせるモデルの限界から,評価や推定は否応なく不確かなものとなる。不確実性解析とは,そういった不確実性の大きさを定量的に見積もることである。不確実性の大きさは,評価や推定の結果を用いて,何らかの判断や意志決定を行う際に重要な情報となる。
プラスチック添加剤
加工性や特性を改良し,プラスチックをそれぞれの用途に適するようにするための物質。
  • 可塑剤:プラスチックに柔軟性をはじめ,必要とする各種の性能を附与し,その性能を持続させるための可塑化のために添加させる物質である。可塑剤が使われる樹脂は,ポリ塩化ビニル(PVC)が圧倒的である。
  • 難燃剤:燃焼を広がらないようにするか,または広がり難くする物質である。電気絶縁材料,建材,車両用等に使われるプラスチックでは,難燃性を要求される場合が多い。難燃剤はハロゲン系,リン系,無機系,シリコーン系等が開発されている。需要量は無機系,ハロゲン系,リン系と続いている。
  • 安定剤:PVCは熱や光で劣化するため,加工時と製造後の着色,分解を防ぐために使用される。主成分で安定剤を分類すると,鉛,バリウム,カルシウム,亜鉛および有機スズ等の金属系安定剤と,純有機安定化助剤に分けられる。
  • 酸化防止剤:プラスチックの成形時等に,空気中の酸素によるラジカル連鎖反応で起こる酸化劣化を防止または抑制するために使用される。酸化防止剤は約350種あり,そのうち一次酸化防止剤としてのフェノール系が約100種あり,需要量も酸化防止剤の約半分を占めている。
  • 紫外線吸収剤:紫外線吸収剤は,それ自身が紫外線を吸収し,分子内で熱,リン光,蛍光等の無害なエネルギーに転換し,プラスチック内に存在する発色団が紫外線で励起されるのを防止する。
プロトタイプ
一般的には,デモンストレーション目的や新技術・新機構の検証,量産前での問題点の洗い出しのために設計・仮組み・製造された試験機・試作回路・コンピュータプログラムのことを指す。本事業の環境動態モデルの場合は,機能や適用地域が限定されたものをプロトタイプと呼び,主に本事業内での解析に用いる。
ベイジアンネットワーク
因果関係を確率論的にモデル化する手法であるグラフィカルモデリングの一つである。エンドポイント間の因果関係を,例えば無毒性量(NOAEL),最小毒性量(LOAEL)の相関関係に基づき,ベイジアンネットワークとして構成することが可能である。他にも,化学物質間,動物種間の関係をベイジアンネットワークにより表現することが可能である。
ベースライン死亡者数
ある汚染物質に暴露することによって死亡者数が増加する場合,その汚染物質への暴露がゼロであったとしたときの死亡者数。その汚染物質の暴露による追加的な死亡者数が,ベースライン死亡者数のパーセントで示される場合を,相対リスクモデルと呼ぶ。ベースライン死者数と無関係であるモデルは,絶対リスクモデルとなる。
放散速度
一定量(一般的には面積のことが多い)の建築材料等から一定時間内に放散される化学物質の量。
放散量試験
建築材料や電気電子材料から空気中へ放散する揮発性物質を測定する方法。ここでは特に,マイクロチャンバーを用いて材料から空気中へ放散する準揮発性有機化合物の測定(JIS A 1904,マイクロチャンバー法)を指す。
ボックスモデル
化学物質等が出入りする一つの単位を箱(ボックス)で表現したモデル。室内をボックスとして,空気の流入,流出,ボックス内の反応等で構成され,室内空間の化学物質濃度等を推定するために用いる。
マテリアルフロー解析
ライフサイクル評価(LCA)では,マテリアルフロー解析(Material Flow Analysis, MFA)とは,区域および期間を区切って,当該区域への物質の総投入量(エネルギー使用量等),区域内での物質の流れ(製品等),区域外への物質の総排出量(二酸化炭素等)等を集計することを意味する。しかし,リスク評価では,製品だけでなく化学物質そのものにも焦点をあてた解析(Substance Flow Analysis, SFA)を意味し,区域および期間を区切って,区域内での製品および化学物質の流れと区域内での化学物質の環境中への排出量を推定することである。
  • マクロマテリアルフロー解析:物質の生産量や使用量,製品における成分や配合率,製造加工工程の状況,PRTRでの排出移動量の情報に基づき,マテリアルフロー解析によって経験的に排出係数を類型化すること。
  • ミクロマテリアルフロー解析:マクロマテリアルフロー解析において排出量に係る主要なパラメータを抽出するとともに,工程における操業状況や製品使用状況等をもとに排出の実態を実測値等に基づいて解析して,理論的な排出量推定式へと数式化を行うこと。
無毒性量
毒性試験において,暴露群での有害な影響の重症度や頻度が統計学的もしくは生物学的に対照群よりも有意に増加しない最も高い投与量。
無影響濃度
毒性試験において暴露群と対照群との間で有意な有害影響がみられなかった被験物質の最高濃度。
有害性の機序
化学物質への暴露による有害影響が生じる仕組みやメカニズムのこと。ただし,本事業では,個々の化学物質に関する詳細なメカニズムという意味ではなく,大まかな有害性の種類や,有害性試験で観察されるエンドポイント(生化学的,病理学的なもの等,様々)についての一般的な相互関係や因果関係として使用している。
有害性評価
化学物質に暴露することによりヒトや環境生物に生じ得る有害な影響の種類を確認し,どの程度の濃度で暴露あるいはどの程度の量を摂取すると有害な影響が生じるのを明らかにすること。
用量
経口毒性試験における化学物質の投与量(単位は,体重当たりの化学物質量)あるいは吸入暴露試験における化学物質の空気中濃度。
リスクトレードオフ
削減の直接的な対象であるリスク(目的リスク)を削減させるための行為により,新たにリスク(対抗リスク)を生じた際のリスクの変化をいう。このリスクトレードオフには以下のように4つの種類がある(Graham, Wiener編, 菅原監訳 リスク対リスク 昭和堂)
表2 リスクトレードオフの種類
本事業では,同一用途群の物質の代替に伴うヒト健康リスクの変化または生態リスクの変化に限定している。
リスクトレードオフ評価書
5つの用途群についてそれぞれ,代替しないというベースラインシナリオとともに,複数の代替シナリオを設定し,排出量,環境媒体中濃度,ヒトや生物への暴露量,ヒト健康リスク,生態リスク,代替のための追加的な費用を推計し,リスクトレードオフ解析を実施する。これらをすべてまとめて記述したものを評価書とする。これらは,行政が意思決定のために実施する規制影響評価や,事業者による自主的なリスク評価のモデルケースとなる。
リスク評価
製造,使用,廃棄等の各ライフサイクル段階から屋内外環境に排出された化学物質にヒト等が直接または間接的に暴露することにより発現する有害な事象(死亡,疾病等)の発生確率(可能性)とその重大さ,すなわちリスクを評価すること。有害性評価,暴露評価およびリスク判定の要素で構成される。
類型化
性質の類似したものをグループ化し,各グループに属するものは基本的に同じ性質のものとして取り扱うこと。