NEDOプロジェクト
ナノ粒子特性評価手法の研究開発
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研究開発項目

3. 工業ナノ粒子の有害性評価手法の開発
(1)工業ナノ粒子有害性評価試験の開発
イ.経皮曝露による皮膚形態学的影響の評価

実施者(所属)

足立孝司, 山田七子, 山元修(鳥取大学医学部感覚運動医学講座皮膚病態学分野)

研究目的

経皮曝露による二酸化チタン(TiO2)ナノ粒子の皮膚への形態学的影響を評価する手法を開発し手順書を作製することを最終目標とし, 動物を用いてTiO2ナノ粒子の単回曝露後の皮膚における局在や皮膚の形態学的変化についての研究を行った.

材料と方法

ラット(鳥取大学医学部動物実験委員会の承認済み)を用い, 10wt% TiO2含有エマルジョンとコントロールエマルジョンを背部皮膚15cm2(5×3cm)の範囲に外用し, 4時間後の皮膚を採取し, 光学顕微鏡および透過型電子顕微鏡(走査型電顕)による観察, 分析を行った. 免疫組織化学的染色を行い, 表皮細胞の対象抗原の局在の変化を観察した. terminal deoxynucleotidyl transferase-mediated deocyuridine triphosphate-biotin nick end labeling (TUNEL)法によるアポトーシス細胞の検討も行った. テープストリッピング法を用いて, 皮膚表面の粒子の分布についての観察分析を行った. また, fluoresceine isothiocyanate (FITC)標識した10wt%TiO2含有エマルジョンも作製し, 同様に単回4時間曝露実験を行い, 蛍光顕微鏡および共焦点レーザー顕微鏡用試料を作成し, 観察を行った. さらに, 曝露1日後, 3日後, 7日後の皮膚も採取した.

結果

光顕的に曝露4時間後のTiO2曝露群で黄褐色の粒状物質が毛包間表皮角質層上層(図1)ならびに毛包漏斗部角質層(図2)に局在していた. 表皮や毛包の生細胞領域への侵入はみられなかった. 表皮の顆粒層〜基底層の厚さに変化はなかった. 表皮, 毛包, 真皮に著明な病理組織学的変化はみられなかった.
免疫組織化学的に曝露群とコントロール群の間に明らかな相違はなかった.
蛍光顕微鏡および共焦点レーザー顕微鏡観察では角質層上層と毛包漏斗部に蛍光信号がみられた. 表皮, 毛包の生細胞領域や真皮には蛍光はみられなかった.
透過型電顕による観察では, TiO2曝露群すべての角質層上層と一部の毛包漏斗部に電子密な微細顆粒状物質あるいはその凝集体が観察された. 元素分析で, これらがTiO2であることが確認された. 角質層下層や顆粒層以下の表皮・毛包上皮の生細胞や真皮にTiO2と思われる物質は確認されなかった. 細胞学的変化は確認されなかった. これらの顆粒は経時的に減少し, 7日後には毛包入口部上部に限られていた.
走査型電顕による観察では粒状物質が全体に均一にみられ, EDX分析でチタンと確認された. テープストリッピング40回剥離(中等度剥離)後では粒状物質は毛包開口部およびその周囲にのみ分布し, チタンを検出した. 80回剥離(高度剥離)後では一部の毛包開口部にのみわずかに粒状物質がみられ, チタンを検出した.
毛包間表皮角層(HE染色) 毛包漏斗部(HE染色)
図1 毛包間表皮角層(HE染色) 図2 毛包漏斗部(HE染色)

図1 角質層上部にTiO2の黄褐色粒子が局在している.
図2 毛包漏斗部の角質層のやや深いところまでTiO2粒子が見られる.

外部発表

山元 修. 工業ナノ粒子の生態影響評価:二酸化チタンナノ粒子経皮曝露による皮膚形態学的影響の評価. 第82回日本産業衛生学会. 福岡, 2009-05-21.

Adachi K, Yamada N, Yamamoto O, Yamamoto K. Evaluation of the biological influence of ultrafine titanium dioxide on hairless rat skin. Post IID 2008 Satellite 5th Meeting of SSSR (Society for Skin Structure Research) and SCUR (Society for Cutaneous Ultrastructure Research). Otsu, Japan, 2008-05-17/19.

山元修. ナノ粒子の経皮吸収による健康影響. 日本エアロゾル学会エアロゾルシンポジウム.ナノ材料の製造、計測、環境、健康に関するシンポジウム.東京, 2006-11-28.