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事故リスク評価検討調査

2011年以降に発生した最近の化学プラントにおける3件の重大事故の事故調査報告書をベースに、産総研で開発した事故分析手法PFAを用いて、事故の進展過程とそこから抽出される原因の分析を行い、事故進展フロー図にまとめた。

事故の個々の原因と安全文化評価項目を中心とする保安力評価項目との関連性を分析した結果、共通的な項目が事故の発生要因と関連性があることが示された。

分析結果をそれぞれの事故の事故調査委員会関係者に提示し、分析の妥当性や注意すべき項目などについて意見を聴取し、その結果を先の分析結果に反映させた。その際、3件の事故から得られる重要課題として、現場作業者の安全感性の低下、設計側の安全感性の低下、そして、それらを強化していくための教育機関と業界とが一体となっての教育の見直しが指摘された。

さらに、これらの保安力評価項目について、本事業で実施された良好事例の分類に用いられた現場保安力の要素マトリクスとの関連性を分析し、事故の共通的な発生要因の改善に適用可能な良好事例の提案のための知見を得ることができた。

イベントスタディと呼ばれる統計的手法を用いて、1990年以降に発生した主に化学産業での事故44件を対象として事故が企業価値に及ぼす影響を定量化した。事故後の株価上昇率は、もし事故が発生しなかったら実現していたであろうと予測される株価上昇率を中央値で評価しておよそ13%下回っていた。事故による企業価値の減価を円単位に換算したところ、中央値で評価しておよそ310億円の減価と推定された。ケーススタディの結果、イベントスタディから推定された企業価値の減価は現実をまずまず良く推定できていると思われた。

1990年以降の設備への被害が比較的大きかった事故を対象に、売上総利益、売上高、売上原価の事故前後の動きを調べ、事故の財務パフォーマンスへの影響は売上総利益によって測るのがよいと思われた。化学産業に属する上場131社について、2002年から2012年までの財務データおよび事故データを用いて統計分析を行った。平均して、事故は、当年の売上総利益を13億円程度減少させる効果があったことが分かった。

安全対策についての費用便益分析に関する既存研究を調査した結果、以下が明らかになった。産業事故や労働災害の防止対策について費用便益分析を実施するための、一般的に受け入れられている手法はまだ確立されていない。安全対策の直接費用、事故により生じる直接被害については、おおむね共通の理解がなされているようであるが、間接被害は直接的には観察できないので、何らかの推定式が必要となる。さらに重要なのは、安全対策が実際に事故を防止するかどうかが不確実であり、安全対策実施前後の事故発生確率が分からない限り、安全対策に支出すべき費用金額は決まらないことであった。

研究担当者