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避難指示解除地域における被ばく線量の測定と評価

【背景・経緯】

福島(主に避難指示解除区域)における被ばく線量対策は、面的除染が一定の効果を上げて終了した今、今後は、個人の被ばく線量(生活パターンを考慮し空間線量率から推測される値や個人線量計による計測値)に着目した、放射線防護のあり方を検討していくことが必要です。筆者らは2013年以降、産総研が開発に携わった個人線量計(D-shuttle)を用いて、地元住民の協力のもと、被災地域における個人被ばく線量の測定と評価を継続して行ってきました。2018年度以降、産総研内外の研究者と連携して、避難指示解除区域における放射能汚染に対し、地域や個人の状況に応じた効果的な個人被ばく線量低減対策の検討を支援する放射線計測・評価技術を確立することを目的とした研究を行っています。

 

【2019年度の取組みと成果】

2019年度は、避難指示解除後に被災地域で生活する住民の個人被ばく線量の実態把握と被ばく線量の評価ツールのためのモデルパラメータ選択に資する知見を得ることを目的として、避難指示解除区域に帰還し、日常生活を送っている住民に協力いただき、個人被ばく線量の測定、行動様式の調査と住宅周辺の空間線量データの測定を行いました。さらに、これまでの研究の知見を反映させたオンライン上で利用できる個人被ばく線量評価ツール(Web-based tool)のプロトタイプの作成を行いました。避難指示解除地域へ帰還した住民の被ばく線量の測定を行なった結果、個人被ばく線量の年間換算値(自然由来の放射線量を差し引いた値)は大半が1mSv程度以下であり、最大でも2.2mSv程度でした。各個人の被ばく線量の大きさは、長期的な目標である1mSvに近づきつつあるが、生活様式や滞在場所の影響により大きくばらつくことが改めて確認されました。個人被ばく線量評価ツールについては、利用可能なデータに基づき将来の個人被ばく線量の推定と滞在場所ごとの被ばく線量への寄与割合が可視化できるプロトタイプを完成させました(図)。

 

【成果の意義・今後の展開】

本研究で得られた知見は、避難指示解除区域における個人被ばく線量に対する実態の理解とそれに基づく効果的な放射線防護対策の検討への貢献が期待されます。線量評価ツールは避難指示解除区域における個人被ばく線量の将来予測や相談員らによる帰還住民等とのコミュニケーションツールとしての活用が期待されます。今後、個人被ばく線量および空間線量の実測データの充実化とこれまで得られた知見の総合的な評価をして、個人被ばく線量評価ツールのガイダンス等の作成を行う予定です。

※ 本研究は環境省・放射線健康管理・健康不安対策事業の支援により実施されました。本研究にご協力いただいた飯舘村および南相馬市の住民の方々に感謝申し上げます。

 

図 個人被ばく線量評価ツール(Web-based tool)プロトタイプのスクリーンショット例

研究担当者