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種の感受性分布の信頼性評価

【背景・経緯】

化学物質は生態系に影響を与えます。その影響っていったいどの程度なの?を調べるのが、生態リスク評価です。有害性の強さは、生物に化学物質を曝露して、例えば半分死ぬ濃度といった有害性値を求めます。これまでは、調べた有害性値の中から最も低いものを選んで、管理目標値を決めていました。
対して、調べた有害性値全部を用いてそれらが従う統計分布を推定して目標値を決めようとする考え方も提案されています。これが主の感受性分布(SSD)を用いた評価です。
従来の方法とSSDどちらが優れているのかは一概には言えないでしょう。しかし、この条件が揃った時はこちらが良い、という条件に応じた使い分けはできるとはずです。そこで、その条件について調べることにしました。

 

【2019年度の取組みと成果】

ある管理の目標を設定します。例えば、95%の生物を化学物質の影響から保護する、というものです。そして、既存の評価とSSDによる評価、どちらがより確実にその目標を達成するのかを考え、達成できない確率(失敗率)を、いくつかの条件で計算しました。結果、失敗率に影響を及ぼすものは、有害性を何種で調べたか(サンプル数)と有害性が生物種ごとにどの程度ばらつくかであることがわかりました。サンプル数が大きいほど、失敗確率はどちらの評価手法でも下がります。これは、より詳しく調べるほど、確かなことがわかるからです。有害性の種ごとのばらつきが大きいと、既存の評価手法では失敗率は上がりますが、SSDを用いた評価手法では影響がないことも明らかとなりました。ばらつきが大きいと失敗率が上がるのは、ばらつきが大きいデータは予測も難しいということを意味しています。が、SSDは有害性のばらつきにより決まるものですが、そのばらつきに基づいた補正が可能となるため、失敗率に影響を与えないのです。

 

【成果の意義・今後の展開】

最小の有害性を持つ生物を保全しておけば生態系の保全は万全と従来では考えられていましたが、実は結構な確率で管理目標は達成できていないことを明らかにすることができました。そして、SSDを用いればその補正がある程度可能であることも明らかとなりました。この成果はSSDを用いた評価手法推進の一翼を担う可能性があります。今後は、より少ない有害性値の数からSSDを推定する方法論も展開していきたいと考えています。

※ 本研究は日化協LRIによりサポートされています。謹んで御礼申し上げます。

 

図 既存手法(赤)とSSDを用いた方法(青)による、保護目的達成の失敗率比較

nは有害性値の数。どちらも3から10まで調べている。感受性のばらつきが大きい(種ごとに有害性が大きく異なる)ほど、既存手法は目的達成ができなくなる。

研究担当者