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化学物質濃度が高い河川地点はどんな特徴があるのか?:水生生物保全の観点から

【背景・経緯】

都市河川など環境中では,特定の化学物質だけでなく,複数の化学物質,さらには化学物質以外の人為的要因(例えば,気候変動による水温上昇や河道の直線化による生息場の多様性の減少など)が,複合的に水生生物相に影響を及ぼしています。このような状況において,特定の要因を管理することによって,水生生物の保全効果がどの程度得られるかは,その管理を検討する上で重要な情報になると考えます。例えば,ある化学物質の濃度が高い地点のほとんどで,他の人為的な要因の影響が大きければ,その物質のみの管理による保全効果は限定的になると予想されます。

 

【2019年度の取組みと成果】

本研究では,このような課題に取り組む第一歩として,化学物質濃度が高い地点は果たしてどんな特徴を持った場所かを調べるために,界面活性剤の1種であるLAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩)を対象として、日本全国の河川地点における川幅(水面幅)、周辺の土地利用、BOD(有機汚濁の指標)を調査してみました。その結果、LAS濃度の年平均値が高い(0.02 mg/L超の)地点は、①川幅が小さくその変化が小さい(イメージとしては人工水路のような小規模の)河川、②周辺に住宅地や市街地が密集している都市域、③BODが高く有機汚濁が進行した河川、に割合として多くみられることが分かりました(岩崎ら,2019)。

 

【成果の意義・今後の展開】

今後は,当該成果をベースとし,全国の水質調査地点を対象に,任意の化学物質濃度を低減した場合の水生生物の保全効果を定性及び定量的に評価する研究を進めていきたいと考えています。その結果から,水生生物保全を目的として化学物質個別に全国一律の排水規制を実施することの意味や効果を明らかにすることができればと考えています。

※ 本論文は,花王株式会社との共同研究の成果です。

引用文献)岩崎雄一,本田大士,西岡亨,石川百合子,山根雅之(2019)LAS濃度が高い河川地点はどんな特徴があるか?:水生生物保全を目的とした水環境管理への示唆.水環境学会誌 42, 201-206.

 

図 有機汚濁が進行した都市河川の例

研究担当者