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順序尺度に対する分散分析手法ORDANOVAの改良

【背景・経緯】

新たな試験方法を普及するには、試験方法そのものの精度が十分であることに加え、異なる試験室で同一試験を実施した際の結果のばらつきを把握すること、すなわち統計的精度評価が重要です。そして国際規格ISO 5725では、分散分析など連続尺度(通常の数値データ)を想定した統計的精度評価方法について規定されています。一方で、化学物質や食品等の安全性試験では、影響や菌の有無、影響強度のクラスといった順序尺度で結果が表現されるものも多く使われています。このような試験方法についてばらつき程度を把握するには、ISO 5725による解析方法は適切ではないため、順序尺度に対する統計手法を整備する必要があります。

 

【2019年度の取組みと成果】

順序尺度に対する統計的精度評価手法の研究は、2値データ(影響の有無を表す0, 1データ等)に対してはいくつか方法論が提案されており、3値以上の多値データ(影響強度のクラスを表す0, 1, 2, 3, 4データ等)についてはORDANOVA (Gadrich and Bashkansky (2012) J. Stat. Plan. Inference) なるいわば離散版分散分析手法が提案されています。しかし、ORDANOVAは試験室間の差の有無を調べる統計検定方法は2値の場合に限定されています。そこで私たちは2019年度に、一般の多値の場合にも試験室間の差の有無を調べることが可能となる統計検定方法について提案しました(arXiv:1904.06048)。

また2値の場合についてはすでに方法論がいくつかあるものの、方法論間の比較はほとんど行われていません。そこでISO 5725を発行しているISO/TC 69(統計的方法の適用)/SC 6(測定方法及び測定結果)内に、2値データに対する既存統計的精度評価手法を紹介・比較するガイダンス文章を作成するプロジェクト (ISO/TR 27877) が立ち上がっています。私はそのプロジェクトリーダーを努めており、2019年度にはTR 27877のWorking draft(WD)を作成しました。

 

【成果の意義・今後の展開】

この成果は、化合物の安全性評価に関する試験だけではなく、測定結果が順序尺度となる測定方法すべてに利用可能なものです。順序尺度の測定結果についても連続尺度と同様の解析が行われていることも多く、解析結果がミスリードになってしまっている場合もあり得ます。そのため、上述したガイダンス文章の作業を進め出版することで、連続尺度と順序尺度の取り扱いの違いについて、統計手法ユーザに広く認識してもらうことを目指します。

※ 本研究はJSPS科研費 JP16K21674、JP15K01207の助成を受けたものです。

 

 

図 提案した検定統計量のシミュレーションによる累積ヒストグラム(橙色)と、試験室間に差がないとの仮定の元でその統計検定量が従うことを証明した近似分布の累積分布関数(青色)との比較

 

数学の証明に加え、現実的な試験室数及び繰り返し数においても両者が一致することを確認。(3値データでどの値も等確率、試験室の数=10、各試験室の測定繰り返し数=10の場合)

研究担当者

  • 竹下 潤一
  • 鈴木知道(東京理科大学 工学部 経営工学科)