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化学災害データベースの公開 〜18年の継続は力なり〜

【背景・経緯】

化学プラントでは人命を奪う火災や爆発、環境に悪影響を与える化学物質の漏洩といった大きな事故が発生することがあります。これらの事故を防ぐためにはまず事故について知ることが大切です。しかし、事故について知りたいからといって本当に事故を起こすわけにはいきません。これが過去に起きてしまった事故を教材として学ぶことが必要になる理由です。とはいっても、自分が働いているプラントと取り扱い化学物質、装置、工程などが同じであるような事故事例はそう簡単には見つかりません。そこで、まずはできるだけ多くの事故事例を集めておいて、その中から目的に合う事故事例を探し出せるようにしておく。これが事故事例を集めたデータベースが必要となる理由です。

 

【2019年度の取組みと成果】

そこで産総研は化学事故の概要等を収録したデータベースである「RISCAD」(リスキャドと呼びます)を2002年に公開し、それ以来18年間更新を続けています1)。2019年度に約250件の事故を新たに追加登録した結果、2020年5月時点で約7,100件の事故情報を公開しています。そのうち約100件については「事故進展フロー図」を作成して添付しました(下図)。一般に事故を説明した資料は内容が詳細で分量も多く、読んで理解するのに時間がかかります。事故進展フロー図はひと目で事故の流れが分かるように記述を工夫したもので、全国火薬類保安協会などの外部機関も事故の分析に事故進展フロー図を活用しています。
RISCADは、産総研安全科学研究部門が運営する産業保安に関するポータルサイト「さんぽのひろば」からアクセスでき、すべてのコンテンツを無料で閲覧することができます。企業や学校関係など幅広い方々にさんぽのひろばの記事をご活用いただいています。

 

【成果の意義・今後の展開】

今後は事故データベースの情報を人工知能で分析する技術の開発がトレンドになります。データベース記載の公開情報と個々の事業所がもつ独自データを組み合わせて事故リスクを予測するといった研究が考えられ、我々の研究グループも高圧ガス保安協会による経済産業省事業の一環として事故関連用語辞書の整備などに取り組みました2)。今後も産業保安の向上にお役立ていただけるよう、RISCADの充実だけでなく人工知能活用など最先端の学術研究にも挑戦していきます。

※ RISCADの公開はJSPS科学研究費助成事業(科学研究費補助金)(研究成果公開促進費)18HP7004の助成を受けています。

1) リレーショナル化学災害データベース:Relational Information System for Chemical Accidents Database)
2) 平成30年度経済産業省委託 新エネルギー等の保安規制高度化事業(新エネルギー技術等の安全な普及のための水素スタンド等保安高度化検討)(3)過去の事故事例の活用による保安確保技術向上の検討https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/000414.pdf

 


図 事故進展フロー図のフォーマット

研究担当者